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えすえふ(仮)
第二話 「宇宙の彼方にカレーパンを」
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「一般人を巻き込むわけにはいかない?冗談じゃない。家をぶっ壊されるわ、居候されるわ、学校に転入するわ……俺はとっくに巻き込まれてるんだよ」
日常は既に、春香の髪の様な艶やかな黒で塗りつぶされている。
「だから、俺のことなんて気にするな。せっかく乗りかかった船なんだ、俺に出来ることがあるなら協力したい」
「……」

春香は黙っている。悩んでいるのだろう。
宇宙刑事としての立場と、仲間のいない地球で独りぼっちになった、少女としての心細さ。
どちらが正しいとはいえない。ただ、後悔はしてほしくなかった。
そして一分ほど考えた後、春香は答えを口にした。

「――分かった」
「本当か?!」
「ああ……結城冬二!」

春香は突然大声を出した。

「は、はいっ!」
「地球での捜査にあたり、現地協力員として貴方の同行を許可する!そして捜査中、貴方の行動の一切の責任は、私にあることを、ここに誓う!」

春香の声は廊下中に響き渡った。
宣誓が終わると、彼女は満面の笑みで、手を差し出した。

「ありがとう、よろしくな、冬二!」
「……こちらこそ!」

手をとり、お互いしっかりと握り合った。
これからは嫌なこと、逃げ出したいこともあるだろう。しかし、苦には思わなかった。
青春のスパイスは、ほんの少しの好奇心。
それだけがあれば、どんな辛いことでも平らげられる。





「……でも春香、ここで大声を出すのは勘弁してくれ。他の皆がいるし」

購買に人が群がっていたのを忘れていた。さっきの恥ずかしい会話は間違いなく聞かれているだろう。

「安心しろ冬二!スイッチ一つでお手軽消音。皆に大人気の『宇宙ノイズキャンセラーくん』をさっき使ったからな。私達以外には誰も聞こえていない!」
「わぁお!凄いや春香!」
「お値段何と日本円にして――」

春香と下らない寸劇をやっていると、彼女の背後の女子生徒が目に入る。
その少女は、白いビニール製の大きな袋を背に担ぎ、重い足取りで廊下を歩いている。袋の中には大量の何かが入っていた。

「……おい春香、あれ……」
「ん?どうした?」

春香は振り返り少女をみる。そして、彼女を指差し、

「いたぁーーーーーーー!」と叫んだ。

少女はその声に驚き、急いで昇降口のほうへ走っていく。

「冬二、おそらく奴がカレーパン密輸の犯人だ!追うぞ!」
「お、おうっ!」

春香とともに廊下を駆ける。
意外なことに、春香は足が速かった。宇宙刑事として鍛えているからだろうか、先にスタートした彼女に一向に追いつけない。

「な、なな、何でバレたんですかーーーーっ?!」

少女は必死に逃走を試みるも、重い荷物を持っているからか、瞬く間に距離は縮まってしま
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