第二話 「宇宙の彼方にカレーパンを」
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「うわあぁッ!来たぁぁぁぁぁぁぁ!!」
インドラブレッドが砂埃を巻き上げながら突撃してきた。
「少年!レバーを握れ!思いっきりッ!!」
春香の先輩が初めて、引き締まった声で叫んだ。
目を瞑りながら、力の限りレバーを握りしめる。
ガシャッ!ガシャンッ!
デンファレの両手には銃が握られていた。大きな口径に対し銃身は短い。敵に向かって照準を合わせたそれは、光と音を炸裂させ、火を放った。
ドガガガガガガガガガガガガッ!
デンファルの銃から放たれた光弾は、空中で分裂し、インドラブレッドの身体全体に襲い掛かった。一発受けた程度では、強襲モードの彼は止まらない。装甲もあまり傷つかず、ダメージは軽いように思われた。
しかし、放たれた弾丸は一発だけではなかった。
刹那の間に、何発もの光弾が発射され、分裂し、彼の全身に当たる。
十発目、速度が落ちる。
五十発目、装甲が焼け、穴が開く。
百発目、突撃姿勢が保てなくなる。スラスターが破壊される。
百五十発目、突撃が完全に止まる。立っていることすら難しい。装甲はもはや穴だらけ。
二百発目、身体が後ろに倒れる。空が青かった。
「……なぁ、この銃は、どういうものなんだ?」
春香の先輩はにやけた顔で答える。
「私の特製、暴走機動兵器制圧用連射型ビームショットガンだ」
――ビームって凄い。そう思った。
「――午後2時17分、アランシア・カスペーゼ。貴様をカレーパン不正流通の容疑で逮捕する」
アランシアの両手に手錠が掛けられる。彼女は顔を泣きはらして、しかし懸命に泣くのをこらえながら、「はい……」と頷いた。
最初は宇宙犯罪者なのだから、見た目に反して性格は凶暴なのだろう、そう思っていた。
だが、今この場にいるのは(非常に可愛らしい外見以外は)ごく普通の、泣き虫な少女だった。
ヒック、ヒックと、嗚咽は一向に鳴り止まない。その姿があまりにかわいそうで、つい声をかけてしまう。
「なぁ、アランシア……だっけ?どうしてこんなことしたんだ?」
彼女は今回の事件に何故自分が関わったのか、自分の生い立ちを含めて説明した。
「――なるほどなぁ。今まで宇宙について色々な妄想をしてきたけど、そんな人たちもいるなんてことは、考えもしなかったな」
「地球もそうだろう?いろんな人がいて、いろんな境遇の人がいる」
「……なぁ春香、この子、どうにかできないかな?」
「?どうにか、とは」
「アランシアの話を聞いてくると、この子よりも、その組織のほうが悪いと思うんだよ。必要ならカレーパンぐらい俺が毎日でも買ってあげるし、わざわざ逮捕するっていうのは……」
「――っ?!」
まさか自分をこんな目に合わせた人から、そんな言葉が出るとは思っていなかったのか
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