第二話 「宇宙の彼方にカレーパンを」
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「――ここが美術室。で、そこの廊下の先が体育館だ」
「ふむふむ、これが地球の芸術か。興味深い……」
春香は美術室を好奇に満ちた目で見渡した。室内には彫刻や絵画など、多数の作品が雑多に置かれており、薄暗い室内にもかかわらず明るい雰囲気を感じられた。今は使われていないが、放課後には美術部員達とともに、賑わいも戻ってくるだろう。
「む、これはなんだ?」
春香は教室の隅あるプラモデルを指差す。
そのプラモデルは十年ほど前に放送された『機甲傭兵ゼルビス』というアニメに出てくる人型を模したロボットで、敵勢力の機体ながらも、無骨なデザインと劇中での痒い所に手が届くような活躍により、今なお根強い人気を持っている、というものだった。
「ああ、それはロボットのプラモデルで――って何で美術室にこんなものが……」
何故こんな所にあるのだろう。まさかこれをモデルにして絵を描いたりするのだろうか。
「なるほど、地球にもこのような兵器があるのだな」
「いや、これはアニメの中のやつだから……へ?地球にも?」
同じようなものが宇宙にもある。春香はそんな言い方をした。
「よし、西館も大分回ったな。冬二、次はどこへ――」
――キーンコーンカーンコーン。
彼女の言葉を遮って、昼休みを告げるチャイムが鳴った。
「もうお昼か。結局、授業サボっちまったなぁ……」
ホームルームの後、春香は過直ぐに
「それはいかん。学生たるもの勉学に励まなければいけないぞ」
どうやら、春香は自分が教室から連れ出したことを忘れているらしい。
「誰の所為だと思ってんだ!」
「え!もしかして私の所為なのか?!」
そんなこと考えもしなかった、という顔で彼女は驚いた。勉学に励まねばと言っておきながら、自分がその機会を奪ってしまった――そんな自己嫌悪をしたのだろう、春香は立ち止まり、俯いてしまう。
「そうか、私が考えなしに案内を頼んだから……冬二、本当に申し訳ない」
春香は沈痛な面持ちで深々とお辞儀をした。それは角度にして90度、風紀委員や先生たちが見たら思わず拍手を送るぐらい、美しい姿勢だった。
「あ、いや……そこまで謝らなくても……」
「いや、私が悪いのだ!冬二のことを考えず、私は自分のことばかり――!宇宙刑事失格だ!」
顔を上げた春香は目に薄っすらと涙を浮かべている。
「そんな真剣に捕らえなくてもいいって!さっきのは軽い冗談みたいなものだから。授業の一つや二つ、三つや四つくらい、出席しなくても、どうってことないよ」
「そ、そうなのか……?むぅ、まだまだ地球の文化への理解が足りていないな」
普段は強気な彼女が、今回のような暗い顔を見せたのは、母の形見だというイヤリングを見せたときだけだ。
自
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