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最高のタイガース=プレイヤー
第八章
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第八章

「そうですね」
 森が広岡のその言葉に頷く。
「ここでの一点は試合を決めるだけでなく」
「シリーズの流れも決めかねない」
 彼はまた言う。
「だからこそだ。ここは攻めるぞ」
「それでは」
「そうだ。丁度バッターボックスにいるのは辻だ」
 これが非常に大きかった。彼の得意とするのは流し打ちだ。しかしそれは。
「流し打ちは止めるか」
「バースは攻めないと」
「違う。岡田を攻めないのだ」
 それであった。彼は岡田の守備を知っていた。決して足は速くないがその守備は堅実で定評がある。その彼の守備を警戒しているのである。
「ここではな」
「しかしそうなると」
「攻めるところがないか」
「はい、内野も外野も」
 とにかくこの時の阪神の守備は安定していた。中々攻めにくいものがある。ピッチャーはよくないが守備はよかった。これが意外と大きかったのだ。
「攻められませんが」
「何も打つのは守備だけではない」
 しかし広岡はここで言うのであった。
「何もな」
「それではここは」
「転がす」
 即ちスクイズであった。日本シリーズでは伝説的名将である西本幸雄の二回のスクイズがあまりにも有名であるが広岡がここで選択したのはそのスクイズであったのだ。
「しかも一塁側に」
「それで攻めますか」
「これならば。阪神を潰せる」
 広岡はそのスクイズで阪神を一気に潰すつもりだったのだ。一回のスクイズで。そしてその攻撃対象は。
「バースだ」
 それはもう決まっていた。
「バースをそれで攻める、いいな」
「はい、それでは」
「これでシリーズは決まった」
 広岡は勝利を確信していた。だがそれも顔には出さずにサインを出すだけであった。
「これでな」
「阪神もこれで終わりですか」
「打線だけのチームでないことはわかっている」
 それは容易にわかる。広岡とて伊達に知将と呼ばれているわけではないのだ。
「しかし。その穴を攻めれば」
「そのチームはそれで陥ちる」
「今がその時だ。さて」
 サインを出し終えた。後は見守るだけであった。
「これで決まるな」
「我々の優勝が」
 彼等はそう思っていた。最早勝ったものと思っていた。だが。三塁側ベンチの吉田は今も何か妙な含み笑いを浮かべていた。広岡も森もそれには気付かなかった。
 池田が投げる。その瞬間に辻はバントの構えを取り秋山が走る。阪神ファンはそれを見てあっと息を呑んだ。
「スクイズ!?」
「そうきよったか!」
 殆どの者はまさかと思っていた。辻はバントを構えながら一瞬だけ一塁側を見た。攻撃目標はそこであった。
「そこだ!」
 そこに転がす。それで終わりだった。その筈だった。
 しかし。そうはならなかった。バースは彼等の予想より素早く動いていた。そう
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