第二章
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第二章
「来年次第やな」
「そうか」
この年はそれで終わった。三割こそ達しなかったがホームランは三十本を越え勝負強かったのでそれが評価されて残留となった。そうして勝負と言われた次の年になった。
やはり五月までは調子が悪い。本人の言う通り。
「ほなこっからや」
「どうなるかな」
ファンだけでなくチームの上層部もどうかと見ていた。彼等はここでこのバースという助っ人を見極めるつもりであった。どうなのか、正念場であった。
ところがだ。去年より打つのだ。さらに勝負強くなって。皆またしても驚かされた。
「これは流石に」
「予想せんかったか」
「ああ、全然や」
口々にそう言われた。
「何か秘密あるんかな」
「どやろ」
秘密はあった。彼はただの助っ人ではなかったのだ。
日本の野球を必死に学んでいた。相手ピッチャーの癖も積極的に勉強していた。そうして日本の野球選手になっていたのだ。大リーガーであったが彼は日本の野球選手になっていたのだ。それも彼の必死の努力の賜物であった。
それだけではなかった。チームメイト達とも交流を深めていた。そうした意味で彼は阪神の選手にもなっていたのだ。
「またやろう」
「将棋やな」
「そうだよ」
チームメイト達と将棋をさすのが好きだった。しかもかなり強かった。しかも公の場では話すことはなかったが日本語も理解していたのだ。
そうして阪神の選手になると。彼にとって一大転機が訪れた。
当時の阪神の看板選手は掛布雅之であった。彼は阪神の主砲であり名サードであった。打つだけでなくその守備でも評判の選手だった。
彼は甲子園球場を知っていた。だからこそ活躍できたのだがその彼がバースに対して教えることがあった。それこそがバースを変えたのである。
「ええか、バース」
彼はチームメイトに親しげに声をかける。スター選手だが決して飾らなく助っ人の彼に声をかけるのは彼のそうした人柄故であった。
「甲子園は波風があるな」
「うん」
バースはその言葉に頷く。その通りである。
「それを使うんや」
「それを?」
「そうや。この球場は風が強い」
そこを強調する。今甲子園は試合もなくいるのは阪神の選手達だけである。だからこそ掛布も気兼ねなくバースに話すことができているのである。
「それに乗せる」
「風にボールを乗せるんだな」
「そういうことや。力だけやったらこの甲子園は中々ホームランにならんのや」
伝統的に阪神というチームはピッチャーのチームである。ダイナマイト打線は実は短期間でしかなく実際は非常に長い間若林、小山、江夏、村山とピッチャーに支えられた球団であった。彼等は打線の援護は期待できないのはわかっているから決死の顔で相手チームに挑んでいた。甲子園のマウンドには今も彼等の血
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