七幕 羽根がなくてもいいですか?
1幕
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フェイはマンションの自室で、カーテンを閉め切り、灯りも点けずベッドの上で膝を抱えていた。
ルドガーとエルたちはトリグラフにいない。ユリウスの目撃情報がリーゼ・マクシアのイラート海停で上がったとのことで、探索のために出かけたのだ。
フェイは同行しなかった。学校で補習があるから――というのは半分本当で、半分嘘だ。
補習を終えてから、〈妖精〉の力でルドガーの居場所を特定し、風に乗って翔けて行き、すぐにでも合流することもできた。
それをしなかったのは、ルドガーやエルがミラに優しくするところを見たくなかったからだ。
特にエルは、正史世界に来たミラをずっと構い倒している。ミラに行く宛てがなくルドガーの家でエルと同居しているというのも大きい。
(わたしのお姉ちゃんなのに)
そう思ったから。一緒に行けない、と常にないことを言ってエルたちの関心を引こうとした。嘘だと見抜かれて、「何があったの?」とエルに尋ねられたかった。ミラよりフェイを心配してほしかった。
だが、どれも叶わず、エルもルドガーもミラと共に出かけてしまった。
(何でミラばっかお姉ちゃんと一緒にいるの? 何でお姉ちゃんはわたしよりミラを構うの? お姉ちゃんの妹はわたしでしょう?)
胸の底に黒いモノが澱んでいく。澱んで、重くなって、動けなくなりそうだ。
ぴんぽーん
チャイムが鳴った。一度目は無視した。二度、三度と続いて、フェイはベッドを下りて玄関に向かった。
インターホンに出て、画面を点けた。
《よかった。やっと出てくれた》
「ジュード……」
来訪者はジュードだった。ジュードは片腕に食材が入った袋を抱えている。彼だと分かっていればすぐにでも出たのに。
玄関ドアのロックを解除し、ドアを開く。
「ひょっとして倒れてたらどうしよ…って…フェイ!? その格好!」
「? なに?」
「え、いや、その! と、とにかくお邪魔します!」
ジュードはフェイを押しやるようにして部屋に上がり込んだ。人が離れたことでドアが自動的に閉まる。
「だめだよ、フェイ! そんな格好で表に出ちゃ!」
「……フェイ、ワルイことしたの?」
「悪……くはないんだけど全面的にはっ。何ていうかその……エチケット! そうエチケットの面で、下着のまま外に出るのはよくないからっ!」
言い切り、ジュードは膝に手を突いて息を荒げた。ダイジョーブ? と覗き込むと、手の平を向けて待ったのポーズをされた。なので待っていると、ジュードは起き上がりざま後ろを向いた。少しだけ見えたジュードの顔は赤かった。
「向こう、向いてるから、その、何でもいいから、服着てくれないかな?」
「分かった」
ジュードがそう言うのなら。
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