暁 〜小説投稿サイト〜
フェアリーテイルの終わり方
七幕 羽根がなくてもいいですか?
1幕
[1/2]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
 フェイはマンションの自室で、カーテンを閉め切り、灯りも点けずベッドの上で膝を抱えていた。

 ルドガーとエルたちはトリグラフにいない。ユリウスの目撃情報がリーゼ・マクシアのイラート海停で上がったとのことで、探索のために出かけたのだ。

 フェイは同行しなかった。学校で補習があるから――というのは半分本当で、半分嘘だ。
 補習を終えてから、〈妖精〉の力でルドガーの居場所を特定し、風に乗って翔けて行き、すぐにでも合流することもできた。
 それをしなかったのは、ルドガーやエルがミラに優しくするところを見たくなかったからだ。

 特にエルは、正史世界に来たミラをずっと構い倒している。ミラに行く宛てがなくルドガーの家でエルと同居しているというのも大きい。

(わたしのお姉ちゃんなのに)

 そう思ったから。一緒に行けない、と常にないことを言ってエルたちの関心を引こうとした。嘘だと見抜かれて、「何があったの?」とエルに尋ねられたかった。ミラよりフェイを心配してほしかった。

 だが、どれも叶わず、エルもルドガーもミラと共に出かけてしまった。

(何でミラばっかお姉ちゃんと一緒にいるの? 何でお姉ちゃんはわたしよりミラを構うの? お姉ちゃんの妹はわたしでしょう?)

 胸の底に黒いモノが澱んでいく。澱んで、重くなって、動けなくなりそうだ。


 ぴんぽーん


 チャイムが鳴った。一度目は無視した。二度、三度と続いて、フェイはベッドを下りて玄関に向かった。
 インターホンに出て、画面を点けた。

《よかった。やっと出てくれた》
「ジュード……」

 来訪者はジュードだった。ジュードは片腕に食材が入った袋を抱えている。彼だと分かっていればすぐにでも出たのに。

 玄関ドアのロックを解除し、ドアを開く。

「ひょっとして倒れてたらどうしよ…って…フェイ!? その格好!」
「? なに?」
「え、いや、その! と、とにかくお邪魔します!」

 ジュードはフェイを押しやるようにして部屋に上がり込んだ。人が離れたことでドアが自動的に閉まる。

「だめだよ、フェイ! そんな格好で表に出ちゃ!」
「……フェイ、ワルイことしたの?」
「悪……くはないんだけど全面的にはっ。何ていうかその……エチケット! そうエチケットの面で、下着のまま外に出るのはよくないからっ!」

 言い切り、ジュードは膝に手を突いて息を荒げた。ダイジョーブ? と覗き込むと、手の平を向けて待ったのポーズをされた。なので待っていると、ジュードは起き上がりざま後ろを向いた。少しだけ見えたジュードの顔は赤かった。

「向こう、向いてるから、その、何でもいいから、服着てくれないかな?」
「分かった」

 ジュードがそう言うのなら。
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ