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真・恋姫†無双~現代若人の歩み、佇み~
第三章:蒼天は黄巾を平らげること その6
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詰めてくる彼等に、丁儀は呆れた。

「こんな時に仲間割れか?外を見ろ。今にも官軍が城壁をよじ登らんとしているんだぞ。わが身可愛さに外よりも内側の掃除を優先するとは、賢くないな」
「問答無用。黄巾を捨てる裏切り者め。剣を抜け」
「裏切り、ね。まぁ、そういわれても仕方がないか」

 あまりにも自分達とかけ離れた雰囲気のためか、他の兵達が助けに来ない。否、実際に仲間割れなどどうでもいいのだろう。官軍に攻められるこの状況では。
 その時、『ドォン』と、何かを強く揺るがす音が正門から響いた。ちらりと、慌ててそこへ駆け寄る兵達を見るに、官軍の破城槌が正門に辿り着いたのだろう。城壁にも次々と梯子が掛けられて、最上部にある孫の手のような鉄鎌によってがっちりと城壁に噛み付いている。狙い澄ました弓によってそれを取り外そうとする者も現れない。遠からず城壁の上で戦いが始まるだろう。

(時間は限られているな。曹操軍が入ってくる前に、何とかして正門に辿り着かねば。仁ノ助を説得しなければ官軍はどこまでも俺達を追ってくるに違いない)
「やれ」

 刺客の刃がきらりと光り、彼等の背後でついに官軍の先兵が城壁の縁に手を掛けて、戦意皓皓とした顔を露わにした。
 丁儀はその場の誰よりも早く、足を城内へと向けると一歩二歩として、思い切り跳躍した。倒壊した木材の束を軽々と越え地面を数度回って勢いを殺すと、丁儀は兵であふれかえる表通りを避けるように裏路地へと進む。「見失うな、追え!」との声が響き、幾多もの足音が彼を追跡してきた。目の前の小路から飛びだしてきた男が此方をぎろりと睨み、剣を抜かんとする。だがそれを許さず、丁儀は得意の居合抜きを見舞ってなで斬りにし、さらに走っていく。官軍が突入するまでにどうにか刺客を振り払わねばならない現実に、彼は煮えたぎるような苛立ちを覚えた。 
 
 合戦の音は時と共に強く、そして険しいものとなっていく。ごうごうといわんばかりに兵達の絶叫が絡み合い、何もできぬ市民らは家に隠れて震えるばかりであった。
 広宗の中心にある本城の最深部、むせ返るような死臭が漂う奥の間にて、三人の老人が儀式を執り行わんとしていた。野獣と思えそうなほどに穢れ、長く伸ばされた白髪。装束は生贄ーーー老人らの眼前にはそれぞれ紫炎が燈された大盃があり、人と思わしき手足が縁から覗いていたーーーを捌いた際に掛かった返り血で染め上がっている。
 震えんばかりの狂気に身を委ねて、張三兄弟という身分を偽った大洪、楊鳳、そして白爵は口々に唱えた。

「時勢、いよいよ盛況にして審判の時来たり。大願、まさに広大にして漢世顛覆(てんぷく)の時迎えん。黄巾の同朋らよ、いざ祈りを捧げようぞ!」
「蒼天すでに死す、黄天まさに立つべし。歳は甲子に在りて、天下大吉にならん!」
「我らの思い
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