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真・恋姫†無双~現代若人の歩み、佇み~
第三章:蒼天は黄巾を平らげること その6
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切ったバネのようになっている。上官に隠れて飲酒・姦淫を働くなどは当然の事といえ、上官らもそれを黙認する所があった。そんな中、地平線の闇から押し寄せる轟きを聞いてもすぐには信じられなかったし、身体でその振動を理解する時には人波は数里の距離にまで迫り、彼らが掲げる軍旗にも悟るものがあった。更にゆるゆるの心を引っ叩くほどに衝撃的であったのはその数だ。
 
 ーーー桁が違う。

 口をあんぐりと開ける愚昧の者達に近付いていく、数え切れぬほどの大軍勢。大地に罅を入れんかといわんばかりに軍靴を鳴らし、すべての者の快眠をぶち破らんかといわんばかりに鎧を鳴らす。地獄の湯気のように砂煙が立ち上って薄暗い天地を灰色に染めていく。それらが出来るのはたかだか二千、三千程度の小規模なものではない。数万の大人数でなければできなかった。
 警邏の兵は身体の酔いを恐怖に変え、人生最大の力を籠めて警鐘の銅鑼を鳴らした。大地の震えによって広宗の眠りは既に妨げられていたが、この高調子によってその意識は一気に変容する。誰もが殺気立ち、怯えを来したように慌てはじめた。

「て、敵だっ!敵が攻めてきたぞ!!」
「臆するな同胞たちよ!我等の意思は岩の如く、我等の闘志は炎の如く!黄巾の旗を掲げよ!!朝焼けの黄金色を、我等の旗で埋め尽くせ!!」

 事態を察した上官が声を荒げ、鐘楼に声を投げた。兵等は縋る思いで軍旗を挙げんと縄と引いていく。
 不意に、ビゥと一陣の風が城壁を薙いだ。目を細めた彼らの耳にばきりと嫌な音が響き、一人の兵の頭上に何かが落ちて彼を城壁に押し付けた。それを見て上官は狼狽える。

「な、なんと不吉なっ・・・戦う前より牙門旗が折れるなど」
「伝令!『張角』様より伝達です!敵は勢い盛んにして、野戦で抗する意味はなしと!兵は急ぎ城壁に集まり、本城を死守せよと!」
「むぅっ、おのれ蒼天の獣め!!」
 
 怒りを闘志に変えて上官は官軍を睨んだ。たかが吉凶ごとき、結束と努力で何とかして見せるといわんばかりにやる気を燃やしていた。これまでに見た事がない夥しい敵軍に恐怖する味方を叱咤し、男は自らの存亡をこの広宗に投じんとした。
 所変わり、鐘楼の反対側にある城壁ではちょうど丁儀が城外の敵を視認した頃であった。なんたる軍勢であろうか。広宗の兵だけでなく、市民をも含めてようやく互角にならんかという程の数だ。そして足が速い。大自然の嵐が人の姿を借りて迫ってきているような光景であり、胸がばくばくと鼓動してしまう。

「くそっ!なんて勢いだ!これじゃ逃がすどころじゃなくなるぞ!やり過ぎではないのか、官軍は!おい、他の兵は!?」
「今、向かってきている模様です!」
「遅い!痩せたケツを叩いて、さっさと来いと言え!くそ、まさか俺が指揮を執る羽目になるとは・・・」

 歯
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