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偽典 ドラゴンクエストV 勇者ではないアーベルの冒険
第8章 そして、伝説へ・・・
第弐話 バラモス城へ
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ない」

俺は、あらかじめ想定した回答だったので、よどみなく話を続ける。
「魔王バラモスの城に乗り込むには、不死鳥ラーミアが必要で、勇者のように選ばれたものでなければ、乗ることができません」
「あなたが、竜に変身すればいいじゃない」
勇者の母親の指摘は手厳しい。
アリアハンでの俺の練習を把握していたようだ。
なかなか、手強い相手だ。

だが、俺は説得をあきらめない。
「素敵なおうちですね」
俺は、周囲を見渡してから、感心するように言った。

「?
まあ、そうね。
留守を守るのが努めですから」
勇者の母親は、俺の急な話の切り替えにとまどいながらも、自信をもって答えた。

「それだけに残念です」
俺は、うなずきながらも、悲しそうな表情をみせる。
「?、残念?」
勇者の母親は俺の表情の変化に驚いた。

俺は、勇者の母親の表情の変化にも気にせず話を続ける。
「勇者が活動している間、国から支援金を受けていますよね?」

「当然よ。
お国の為に働いているのだから」
勇者の母親は、誇らしげにこたえる。

「そうですよね」
俺は、ええそうですともとうなずきながら、
「ですが、大魔王はともかく魔王を勇者が倒さなかったらどうなるのでしょうか?」
俺は、残念そうな表情を作る。
「?」
「勇者は、結局、使命を果たしてないですよね。
それなのに、支援金を受けている」
勇者の母親に、わかるように優しく説明する。

「俺たちは、勇者の頑張りを知っています。
ですが、街の人はどう思うのでしょうか?」
「それは、・・・・・・」
勇者の母親は、はじめて困惑の表情を見せる。

「心ない人から、いろいろ言われるのではないのでしょうか。
少なくとも、このような素敵な家に居られないと思いますよ」
本当に残念です。
と、俺は寂しそうな表情をみせる。
「・・・・・・」
勇者の母親は、俺に対して厳しい表情を向けながらも、いろいろと悩んでいるようだった。

「おかあさん。
大丈夫だから!」
勇者が、母親に諭す。
「私が、アーベルさんと一緒に行く!」
「いや、俺が」
勇者の強い叫びに、思わず、オルテガが呼び止める。
「お父さんはゆっくり休んで」
だが、勇者はオルテガをとどめる。

「アーベルさん」
オルテガは、真剣な表情で俺に対峙する。
「はい」
「サルファのこと頼めるか」

「あなた!」
母親が、オルテガに詰め寄る。
「サルファが、望むのだ。
任せようではないか。
なあに、俺たちの子どもだ。
たとえ、魔王バラモスでもいちころだろう。
無事に帰ってくるさ」
オルテガは、信頼の俺に視線を向ける。
「お任せください」
俺は、胸を張って宣言する。
「お願いします」


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