第二章
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その彼にだ、後輩の一人が尋ねる。
「丸山先輩野菜かなり食べますよね」
「ああ、肉も魚も食うがな」
とにかく何でも食べるのだ。
「ちゃんことか好きだな」
「ですよね、特にほうれん草を」
後輩が言うのはこのことだった。
「やっぱり身体にいからですか」
「そうだな、昔はな」
「昔は?」
「アニメあるだろ、漫画の」
後輩に対してあのアニメの話をした。
「水兵さんが主人公のな」
「ああ、あれですね」
「あの顎がやたらしゃくれているな」
「おいらの秘密は、ですよね」
「あのアニメを観てな」
そしてだというのだ、彼に対して。
「それでだ」
「食べるようになったんですか」
「あんなにすぐには強くならなかった」
「あれアニメですし」
それにだった。
「あのほうれん草あからさまにおかしいですから」
「殆どドーピングだな」
「おかしな薬にしか思えないです」
このことは大抵の視聴者が思うことであろう、あのほうれん草は普通にその辺りにある様なほうれん草には思えないとだ。
「覚醒剤かも知れないですよ」
「本当に入っていてもおかしくないな」
「それまでやられっぱなしだったのに」
マザコンのガタイのいい悪役にのされて恋人をさらわれかける、だがそれでもなのだ。
ほうれん草の缶詰という今も店にないものを瞬時に食べてこれまた瞬時に強くなる、アニメの演出と言えばそれまでだがそれでもだ。
「急に無茶苦茶強くなって悪役を叩きのめして」
「悪役が自分の母親に助けを求めてな」
「普通にないですから」
絶対にだというのだ。
「そんなのは」
「ああ、本当にアニメだな」
「俺もあれはないと思ってました」
「俺も気付いた」
哲章にしてもだ、このことは。
「ちょっと成長してな」
「ですよね、それでもなんですか」
「確かにあそこまで急に強くならない」
おかしな薬を決めたかの様な強さを急には備えられないことはだ。
「それでもな」
「ほうれん草は身体にいいですね」
「ああ、最高にな」
いいとだ、彼は後輩に言うのだった。
「だから今もかなり食ってるんだよ」
「そうなんですね」
「ほうれん草は徐々に、しかし確かに身体を強くしてくれる」
そうした野菜だというのだ。
「だからいいんだ」
「それで今もですか」
「あのアニメから食いはじめたけれどな」
その厳つい顔をにこりとさせての言葉だ。
「それでもな」
「先輩のそのお身体をですか」
「ああ、作ってくれた」
「ほうれん草がですね」
「そうだ、いい野菜だよ」
「ですね、じゃあこれからもですね」
「食う」
ほうれん草、それをだというのだ。
「ずっとな」
「そうですか、じゃあ俺も」
「鍋に入れてもいいしお浸しにしてもいい
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