第四章
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「ゴッホの絵は生前一枚しか売れなかったんだ」
「よく言われていることですね」
「生前の彼は不遇だった」
こう学生に話すのだった。
「このことは知っているね」
「はい」
学生は学者に確かな声で答えた。
「僕も」
「そうだね、しかし彼は孤独ではなかった」
「弟のテオがいたからですね」
「隣にいる彼がね」
学者はゴッホの墓、二人が今主に見ているものの横の同じ様な形と大きさの墓、テオの墓も見て学生に話した。
「いてくれたから」
「理解者がいたんですね」
「理解者がいてくれることは大きい」
それだけでだというのだ。
「テオ以外にもよくしてくれる人達がいてくれて」
「郵便局員の人やお医者さんでしたね」
「彼等を描いた絵も残している」
その独特のタッチで描いたものだ。
「それでだよ」
「そうでしたね」
「ゴッホの評価は彼が死ぬ間際から出て来た」
「何かそれが」
首をひねりつつだ、学生はここでこう言ったのだった。
「この人らしいというか」
「ゴッホらしいと」
「はい、そう思います」
「それはどうしてかな」
「だってヴィンセントですよね」
学生が出したのは彼の名前だった。
「ヴィンセント=ヴァン=ゴッホですから」
「最後の最後にはなんだ」
「勝つっていうところが」
「生前は肝心なところでしくじってしまうことが多かったけれどね」
ゴッホの三十七年の人生ではそうしたことも多かった、近頃は誤って撃たれたという説が出ているが自殺した時も急所を狙い損ねて長く生きてしまっている。
「それでもだね」
「はい、最後の最後ですよね」
「勝つのはね」
「はい、最後の最後に勝っていればいいですよね」
「逆に言えば最後の最後で負けたらね」
学者も学生に応えて言う。
「仕方がないよ」
「そうですよね。ですから」
「ゴッホに相応しいというんだ」
名声が死ぬ間際に出て来たことがだというのだ。
「そうだね」
「そういうことです」
「ヴィンセントね」
つまり勝利者というのだ。
「では彼は勝っているんだね」
「その芸術的評価は定まっていますね」
「不滅のものになっているよ」
まさにだというのだ。
「最早ね」
「では僕の考えは」
「合っていると思うよ」
学者は微笑んで学生に述べた。
「それでね」
「そうですか」
「うん、彼の絵は生前はその一枚も安く売れたけれど」
「今は」
「僕達では買えないよ」
学者は笑って学生に述べた。
「絶対にね」
「そうですね、とても」
「うん、それこそ相当な資産家でないとね」
「買えませんね」
「最早その国の財産だよ」
持っていればだ、その域にまで達しているというのだ。
「彼の絵はね」
「じゃあやっぱり彼は認められて
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