山口先生の前世はきっと神様か仏様。
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「ええ、こちらの山口先生のおかげで何とか……二日酔いは良くなってきましたし、車酔いはすぐ治りますから」
「それなら良かった。 ……貴方が山口先生ですか?」
初めて美鶴が山口先生に向き直る。
綺麗な笑顔を浮かべる美鶴に山口先生も笑顔で頷いた。
「はい。 一昨日お会いしましたね」
「そういえばそうでしたね。 椎名先生を色々と助けていただいたようでありがとうございました」
「ははは、香坂先生がお礼を言うことではないでしょう。 いつものことですしね。 今にも倒れそうな椎名先生を一人で帰すわけにいきませんから」
「いつものこと。 なるほど。 椎名先生に随分頼られているんですね。 しかし、ここからは私が――」
二人がにこやかに何やら話してる間に、アパートの廊下の手すりに寄りかかり夏の爽やかな風に当たりながら遠くの景色を眺めていたら車酔いも二日酔いも大分マシになってきた。
いや、一応俺の客人に当たる初対面同士の二人を放っておくのはどうなのかと思ったけどね? 何か妙に話が盛り上がっている様だったから、それなら酔いを醒ますのを優先しようかなっと。
別に仲間はずれにされて寂しいとかじゃないので勘違いしないように。
通路庇で出来る影がギリギリ俺の頭を覆ってくれ、いくら真夏とは言え風さえあれば日陰はそれほど暑く無く、ボーと蝉の鳴き声に意識を溶かしていたら徐々に頭痛が消え、心なしか身体も軽くなった気がした。
――夏という季節は嫌いじゃないのだ。
「よしっ」
自分に気合いを入れるように声を上げてくるりと後ろを振り返ると、美鶴と山口先生が話を中断し俺の方に向き直った。
「それじゃあ山口先生、本っ当にありがとうございました! もう酔いも醒めてきたので大丈夫ですよ」
「……そうですか、良かったですね」
「では、私達はそろそろ中に入りましょうか」
美鶴が山口先生に会釈して俺の腰に手をかけた。
男にスキンシップされるの好きじゃないんだけど、美鶴の場合は所作が自然過ぎてあまり気にならない。
……そうだ! こいつの所作を学べば俺もモテるんじゃないか!?
凄いことに気づいてしまったな。 これからは美鶴の動きをよく観察することにしよう。
「山口先生、この埋め合わせは必ずしますから!」
「はい、楽しみにしていますよ――あ、そうだ」
「はい?」
「二人はこれから昼食なんですよね? 今日は私もまだなんです」
そういえば、俺のせいで山口先生はお昼を食べ損ねてしまった。
――あ、なるほど。 確かにそれだったら調度良いお礼になるな。
山口先生の言わんとしていることに察しが付き、俺は笑顔を浮かべた。
「もし二人が良かったらなのですが……昼食だけご一緒してもいいですか?」
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