お酒だけはダメです天敵です。※
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たのは始めての飲み会で、新卒であるが故に酒を断りきれず飲んでしまった椎名に唇を奪われたその時だ。
柔らかな感触と潤んだ瞳に、無意識に働いていた『普通』からそれる事への危機感が崩れ去り、椎名へ抱き続けていた思いを自覚せざるを得なくなった。
(だから――こうなったのは椎名にも責任がある)
キュッと蛇口を捻りシャワーの水を止め、身体の水滴を拭う。
そうして、全裸のままリビングに戻り、壊れ物を扱うようにやさしく椎名を抱き上げ、山口は自身の寝室へ向かった。
スプリングのきいた柔らかなベッドにふわりと寝かせ、椎名の着ているサマーカーディガンのボタンを一つ一つ外していく。
やがて一糸纏わぬ姿となった椎名の身体を、山口は恍惚とした表情で見つめ、そっと撫でた。
くすぐったそうに身を捩る椎名の、たったそれだけの動作で、せっかく宥めた下半身に甘い痺れが走り再び欲望が鎌首をもたげる。
山口は親の愛という物を感じること無く育った。 両親共に忙しく、余り子どもに関心が無かったからだ。
愛に飢えた幼少期の苦しみは、山口の心を歪ませた。
同性であるにも関わらず椎名をこんなにも好きになってしまったのは、椎名の生徒へ対する無償の愛情に幼いころ求めて止まなかった愛情を幻視したからなのかもしれない。
――あんな暖かい眼差しを向けて欲しかった。
――あんな笑顔で笑いかけて欲しかった。
――あんな風に頭をなでて欲しかった。
子どもに金だけ渡して放置していた両親に、かつて求めても決して叶わなかった儚い夢の残照が、生徒に接する椎名を見るたび脳裏に蘇る。
もちろん、椎名の愛情は親のそれとはまったく違う物だろう。
しかし、親の愛を知らない山口にそんなことは関係ない。
椎名と共に暮らすことができたなら、生徒たちへ向けられる愛情を独占することができたなら、それはどんなに幸せか、そう考えずにはいられなかった。
(だが……それは、決して――叶わない)
人当たりが良く、あまり負の感情を表に出すことが無い椎名が唯一はっきりとした嫌悪感を見せるもの。
それが同性愛だった。
かつて職場で偶然そういった話題が出たことがあった。
その時の椎名の嫌悪に満ちた表情と、きっと他の誰にも聞こえなかったであろう、『気持ち悪い……』という小さな呟きが忘れられない。
最初は同性という理由で椎名のことを何とか諦めようとしていた山口であったが、椎名にとって自分の感情は気持ち悪いものでしかないのだと、どんなに求めようとも決して得ることはできないのだと、そう思い知らされた時、山口の心に暗い火が灯った。
――ただ好きでいることの何が悪いのか、自分のこの感情はそんなにも気持ち悪いものなのか――こんなにも、こんなにも俺は椎
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