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王道を走れば:幻想にて
幕間+コーデリア:王女のワルツ
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「陛下、レイモンド様、御機嫌うるわしゅう」
「見事な踊りであったぞ、コーデリア」
「有難うございます、お父様。これもお父様が私に助言をして下さった御蔭ですわ」
「はてさて、私は何を申したかな。最近はよく老いを感じてな、どのような事を言ったか、細部まで覚えておらんのだ」
「お父様が覚えておられなくても、私は覚えております。あの言葉の御蔭で、私は想い人だけでなく、よき隣人を愛する事が出来ました。これからもそうあっていきたいと強く感じております」
「そうか。ならば重畳。・・・どれ、コーデリア。今宵は少し身体が軽い。私と一曲、踊ってくれんかな?」
「へ、陛下!?」

 キャラに似合わぬ素っ頓狂な声をレイモンドは出す。あまりに意外過ぎたのか声が上擦りかけていた。
 コーデリアも同様に目を見開いていたが、すぐに柔らかな笑みを取り戻して礼をした。

「喜んでお相手を務めさせていただきます、陛下。さぁ、私の手を」
「うむ」

 国王が玉座から下りて舞踊へと参加する。人々はそれに喝采を送りながら温かく迎え、そして再び優美なワルツを送り始めた。
 レイモンドは信じられぬ思いで国王を見詰める。政務の時も大山のようにじっとしているあの御方が、今日はその堅苦しさをどこへ吹っ飛ばしたのか、実に軽快なステップを踏んで娘と踊っていた。他のどの者達よりも繊細で、美しい踊りであった。その皺の入った口元には親しき者にしか気付けないだろう、小さな微笑みを浮かんでいた。

「これは、読み間違えた。まさか陛下があのような事をされるとは・・・」

 戸惑いげに零しながらレイモンドはもしやという気持ちを抱かずにはいられない。あの陛下でさえ今日は踊られているのだ。自分にも美しい女性からの誘いが掛かってもさして不自然ではないだろうと。しかし残念なことに、この日レイモンドに舞踊を誘う声は一つたりともなかった。冷厳さの痛い代償であったと、後に彼はワインと共にこの悲しみを飲み干したのであった。
 時は夏の終わり、秋の始まり。九月の宮廷には季節相応の温かな風が吹き込んでいた。
 

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