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第三十七話 真名
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、ごめんなさい。名前は教えたけれど呼ぶときは普段通りでお願い、二人きりのときでもね。そうしないと……仮面がはがれてしまいそう」
真っ赤だった顔も落ち着きを取り戻し、それどころか少し寂しそうになりながら呟く。最後の部分はほとんど紫苑には聞き取れなかったが、彼はただ頷いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そこは奇妙な部屋……いや、部屋というよりは物置と言ってもいいほどに様々なものが乱雑に置かれている。よく見ると、それらのほとんどが機械やケーブル類といったものだ。
そこを機械仕掛けのリスが走り回り、気まぐれに落ちている部品を囓りだしてガリガリと音を立てている。
その異様な光景、耳障りな音を気にすることも無く一人ディスプレイに向かって端末操作をする女性が一人……言うまでもなく篠ノ之束である。
そう、ここは束のラボである。
「ん〜、ひまヒマ暇だぁ」
先ほどまで行っていた作業は、単なる暇つぶしだったのかある程度で中断して自分が座っているこれまた奇妙な形の椅子をグルグルと回転させて独りごちる。
と、そんなときに彼女の携帯電話が鳴る。
「お、もしやもしや?」
すぐさまその音の発信源に向かってダイブして電話に出る。
「やぁやぁ、久しぶりだね。ずっと待っていたんだよ〜」
この電話が使われたことは今までに一度もない。
何故なら、この電話はたった一人との連絡用に作られたもの。千冬や紫苑ですらこの番号を知らない……もっとも彼らにも専用の電話回線があったりするのだが、現在とある理由で連絡を絶っているため使われることはない。
そして、そのたった一人とは……。
『……ね、姉さん』
篠ノ之箒だった。
「言わずとも用件はわかってるよ、欲しいんだよね? 箒ちゃんだけの力が……専用機が!」
『……あぁ、私は自分だけの力が欲しい。もう見ているだけは嫌なんだ。だから……姉さん!』
「むふふ、私が箒ちゃんのこと理解していない訳ないじゃないか。もう用意してあるよ……その名も、『紅椿』!」
『あか……つばき』
束が高らかと宣言した、新たな専用機の名をなぞるように箒が呟く。
今回のトーナメント、専用機持ちだけが別枠となった。
それは学園としては当然の措置であっても、箒にとってはあまりにも残酷な出来事だった。もし一般部門で優勝できていれば気が紛れたかもしれないが、結果は敗退。
一夏の周りには自然と専用機持ちが集まり、転校生までもが専用機を所持している。
圧倒的な疎外感、無力感。入学してから感じていたそれらが、どうしようもなく強まっていた。
だからこそ、彼女は頼った。唯一、自分の悩みを……それもあっさりと解決してくれる存在に。
「もう少
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