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第三十七話 真名
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あり、何かに恐怖するかのように……。
考えたくはなかったが、紫苑とラウラの試合の際にも何事か起こっていたことは楯無も理解している。それ故に、これから起こるであろう戦いも壮絶なものになるかもしれない、と意識を集中する。例えこの戦いが彼女の望まぬ形になってしまったとしても……。
だが、その覚悟もあっさりと意味を成さなくなった。
先ほどまであたりを覆っていた圧迫感、そしてコアから感じていた震えが急になくなったのだ。
そして今までの攻防で会場内に充満していた砂煙が晴れていく中、先ほどの圧力の震源地とも言える場所にいたのは、ただ力なく倒れている紫苑の姿だった。
『紫音ちゃん!』
『……!? 私たちは棄権します』
その姿を見るや、楯無らは紫苑の元へと駆け寄る。同時に、簪はこれ以上試合を続けられる状況では無いと悟り自分らの敗北を宣言、試合はこの時点で終了した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ん……ここは?」
紫苑は、いまだハッキリしない意識のまま周囲をぼんやりと見渡した。
そこが不本意ながらも、もはや見慣れた感のある保健室だということに気づき自身が先ほどまで試合をしていたことを思い出す。
「そうだ、試合は!?」
そして寝かされていたベッドから飛びだそうとして、ふとその動きを阻害するように体に重みのようなものを感じることに気づく。
「ん……って、えぇ! 楯無さん!?」
彼が見たのは、横に置かれた椅子に座ったままベッドに体を預けて眠っている楯無の姿だった。
「やれやれ、その女の次はお前か……静かに寝かせて欲しいのだが」
突然聞こえてきた声に、再び紫苑は驚く。それもそのはずだ、先ほど楯無を見たときに彼があげた声はほとんど素のものだったから。
「ボ、ボーデヴィッヒさん? 何故ここに?」
そして、声の主が隣のベッドで寝ていたラウラだったから。
内容はともかくとして、彼女がこうして声をかけてくること自体が今まではあり得ないことだった。
「先にここに運ばれたのは私なんだがな……お前が運び込まれてから騒がしくなって静かに眠ることすらできん。その女はお前を看病していたようだぞ、ギャーギャー取り乱して五月蠅いことこの上なかったがな」
「え……?」
ラウラはムスっとしながらも、紫苑に状況を説明した。
その行為を意外そうに思いながらも彼は静かにラウラの話を聞く。
「その女と、似たような顔の……お前とペアを組んでいる更識簪とかいったか? そいつが次の試合がどうのと言い争って渋々その女は出て行ったが……ものの五分もしないうちに戻ってきて今度は強制的に更識簪のほうを追い出し、その後はずっと看病していたようだな」
その言葉に紫苑はいろ
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