Development
第三十六話 好敵手
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スメイトとしてルームメイトとしてライバルとして……そして友として。だからこそ妹である簪が嫉妬をするくらいに、紫苑のことを全力で探した。
結局、彼女の力で見つけることはできなかったがそれでも紫苑は再びこうして彼女のもとに戻った。そして、今こうして再び戦うことができる。それが彼女にとってどれだけ幸福なことか。
この年にしてロシア代表となってしまった彼女。学園に在籍している関係でモンド・グロッソには出場していないが、それ故に彼女にライバルといえる存在は紫苑をおいて他にはいない。
実力的にはまだ自身が勝っていると確信しているが、彼はまだ発展途上であり、その成長速度は楯無を上回るほどで限界も未だに見えない。いま戦えば試合中に実力差を覆される可能性すらある。だからこそ、楯無は紫苑を求めていた。彼の存在は、自分をより高めてくれる……そう信じて。
「気合いが入っていますね」
既にISを展開して会場で相手を待っているさなか、楯無のパートナーであるシャルがプライベート・チャネルで彼女に声をかける。
「そりゃね……なんたって紫音ちゃんと、それに簪ちゃんとの試合だからね。いろいろ思うところがあるのよ」
「なら、僕が足を引っ張る訳にはいきませんね。頑張ります」
「ふふ、あなたなら大丈夫よ。予想よりもずっと強かった、機体の世代差なんて関係ないくらい」
シャルは思いがけない楯無からの賛辞に照れくさそうに頬を掻く。
「でも、油断はできないわね。相手は……強いわよ」
紫苑の力量を直接見ていないシャルだったが、ペア決定後に行っている楯無との訓練で彼女の強さは痛いほど理解している。そんな彼女がそこまで言い切るのだからと間接的に紫苑の力量を推し量り、冷や汗のようなものが流れる。
ある意味、シャル自身にとっても転機となった存在。二人目……いや、世界で初めての男性操縦者。本来であれば国やデュノア社からの要請である調査の対象としては格好の、どころか世界中を震撼させかねない存在である。だが、シャルは彼のことを公表するつもりもなければ調査報告するつもりもない。それは一夏に対しても同様だ。
彼女を受け入れてくれた紫苑や楯無を裏切るつもりはなかったし、この学園こそが彼女の居場所だと少しずつ思えるようになった。男のフリをするのはまだ大変なようではあるが……。
ともかく、彼女にとってもこの試合にかける思いは強かった。
◇
『お待たせしました』
僕らはこれから待ち構える戦いに少し緊張しながら会場へと足を踏み入れる。
既に二人はISを身に纏い、準備は万端といった様子。
僕らもすぐにISを展開して配置についた。
『ふふ、こうして戦うのも久しぶりね。タッグ戦になるとは予想外だったけれど』
『そう
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