第五十八話〜娘の願い〜
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「?」
ヴィヴィオの言葉の意味をライが深く考える前に、ゆりかご内にアナウンスが鳴り響く。
『駆動炉の停止を確認。聖王による動力炉の確保開始………失敗。これよりゆりかご内の損傷部の修復、及び全魔力リンクのキャンセルを行います』
アナウンスが終わると同時にこれまでとはけた違いの出力であるAMFが展開される。
そのせいでライは纏っていたバリアジャケットが解け、私服の姿になる。そしてこれまで、バリアジャケットによって軽減されていた身体の負荷が一気に押し寄せ、意識が一瞬遠のく。
だが、気絶するわけにはいかない為、いつもよりも魔力消費が激しいが再びバリアジャケットを再展開する。
「私はこのゆりかごを動かすためだけに造られたモノだった。私は……“ライさん”たちとは一緒にいれない」
AMFの対象外なのか、ヴィヴィオに特に変化がないまま彼女はそう語る。
「私が貴方に近づいたのも、強い魔導師のデータを知る為にそう造られたからだった」
血を吐くように、苦しそうに、泣くようにヴィヴィオはそう語る。
「私は人間じゃない。だから皆のところには帰れない」
ヴィヴィオの目から幾筋も涙が流れる。
「だから、私を置いて―――」
「ヴィヴィオ、君はどうしたい?」
「…………え?」
「僕は僕が望んだ世界を創る為にここに来た。それは僕の我が儘で僕の身勝手な望みだ。ヴィヴィオにはそんな願いがある?」
ライの言葉にヴィヴィオは顔を伏せる。何かを隠すように、何かを偽るように。
「そんなもの―――」
「ヴィヴィオ」
自分をおざなりにするような言葉を言おうとした彼女に、ライは嘘は許さないといった風に名前を呼ぶ。言葉を中断させられたヴィヴィオはもう一度顔を伏せる。
「…………………ぃ……」
微かな声がヴィヴィオの口から溢れる。その言葉をハッキリ言うまでライは待つ。それは自分の子供の気持ちを知る為に待つ親の姿。
そして堪えきれなくなったようにヴィヴィオは顔を上げ、クシャクシャに歪む泣き顔で叫んだ。
「皆と一緒にいたい!パパと一緒に帰りたい!!」
「………」
「助けて!!パパ!!!」
「その<願い/ギアス>、確かに受け取った」
その言葉をライは笑顔で言い放った。
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