暁 〜小説投稿サイト〜
リリカルなのは〜優しき狂王〜
第五十八話〜娘の願い〜
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 そしてライの放った魔力弾はライの目標―――クアットロに直撃した。
 魔力弾が直撃した瞬間、ただでさえ不安定であった弾に込められた魔力がはじけ、クアットロのいた部屋全体にかなりの衝撃を与えた。
 そして、ライに一方的に恐怖を抱いていた戦闘機人は自分が倒された事を認識できずに意識を失い、それが彼女にとっての今回の事件の幕引きとなった。

「ハァハァ………ハァハァ………」

 自分が求めた結果を引き寄せた事でライの中の緊張が少し解け、それを皮切りに身体に鉛のような疲労感が襲ってくる。
 すぐさま、Cの世界との接続を切り、集合無意識と魔力の流入を止める。その事により、精神的な圧迫感は消えたが、胸のリンカーコアの痛みは取れなかった。
 ACSは展開するのもきつかったが、下手に魔力が溜まってしまえばギアスの暴走が起こる可能性もあったために、ライはゆっくりと床に降り立つことである程度の魔力を消費する。

「………ッ、ヴィヴィオは?」

 痛みを訴えてくる痛覚を理性でねじ伏せ、ライはヴィヴィオの方に目を向ける。
 もう既に、なのはの砲撃は止んでいた為、ヴィヴィオは特に身動きがとれないような状況ではない。しかし、ライの視線の先には、ライと同じく床に降り、頭を抑えて蹲る彼女がいた。

「ヴィ、ヴィオ!」

 戦闘による負傷と疲労で声を張り上げると苦しかったが、その声はヴィヴィオに届く。
 ビクンと肩を揺らし、先ほどとは違い敵意の無い目をした彼女がライの方に顔を上げる。その彼女の表情は戸惑いや悲しみ、怯えを綯い交ぜにしたようなもので、それを見ただけで既に洗脳が解けていることが解る。
 その事に安堵するライであったが、未だにこちらを怯えるような表情で見てくる彼女の反応に疑問を覚える。

「?ヴィヴィ―――」

「来ないで!」

 ヴィヴィオから発せられる拒絶の言葉。その言葉が鋭利な刃物になって自分の心を抉ったことをライは実感した。
 自分が悲しみを覚える事を苦に感じながらも、ライはそれでもヴィヴィオに近づき、安否を確認しようとする。

「僕が怖いのならそれでもいい。それは当然のことだから。だけど、今は―――」

「ダメ!逃げてぇーー!」

 ライが安心させるように話しながら近づいていると、ヴィヴィオが突然叫ぶ。
 その叫びと呼応するように、ヴィヴィオは拳を振り上げ近づいてきたライにその拳を叩きつけた。
 ほぼ、無防備であったライはその拳をモロに受けて、数メートル下がらされる。幸いであったのは、当たった部分がパラディンのバリアジャケットの装甲部分であったことである。

「ヴィヴィオ?」

 ヴィヴィオの行動に驚き、体勢を立て直しながらライは彼女の名前を呟いた。

「私………私は…………もう戻れない」

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