第五十八話〜娘の願い〜
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ていた。
それは戦闘による痛みや集中が原因ではない。それの原因はCの世界との接続にあった。Cの世界からの魔力供給を行っている間、ライは一時的とはいえ自分の精神を向こう側に繋げなければならない。それは魔力だけを取り出すことができるなんて器用な事が出来るわけではない。そこには魔力だけではなく、当たり前のように集合無意識も流れ込んでいた。
ライは様々な情念が流れ込んでくる中、自我を保つために自己を強く意識しつつ、そして更に驚異的な量の演算を行っていた。
これまでの訓練で、三桁に届きそうになっているマルチタスクをフルに使い、「エナジーウイングの運用」「戦況把握」「自身とデバイスのステータス情報」「個々の魔力運用及び管理」等など。それらのことが意識を圧迫しているのが、今のライをジワジワと追い詰める。
そして精神面とは違い、肉体面でも問題は出てきていた。
「――ぐっ」
銀色の翼を震わせ、重力を感じさせない動きをしながらライの口から苦悶が漏れる。
身体に受けた傷も確かに痛むが、それを超えるような痛みが内側から滲みだしていた。
(無茶なのは解っていたけど―――ッ!)
ズキズキと痛む箇所は心臓のそば、魔導師の要、リンカーコアである。
本来、リンカーコアは大気中の魔力を取り込み、それを蓄積または放出する魔力器官である。そのリンカーコアの働きは大きく分けて4つ、蓄積、放出、制御、変換である。この内、ライは特に異常なほど制御と変換に秀でている。
だが、蓄積と放出に関しては、過去に調べた通りAランク程度でしかない。そして今のライは無限の魔力が流れ込みながらも、それに見合う消費が行われていない。
つまり、リンカーコアと言うタンクに魔力という水が際限なく送り込まれているのに、そのタンクから水を出す蛇口から出される水、魔力放出――この場合は魔力の消費――はいくら勢いが増したところで通常の量のままなのである。
そして消費しきれない魔力がリンカーコアに蓄積されるとどうなるか―――
答えは簡単、弾けるのみだ。
身体の内側から膨らむような感覚。それが力強くもあり、身を滅ぼす火薬になっている事にライも気付いている。だが、今拮抗状態に持ち込めているのもこれを使っているおかげであることはライも解っている。その為に身体に走る痛みを意に介さず、演算を鈍らせないよう思考にノイズが交じることも許さずにライは戦い続ける。
そして、現状の打開策としてライは自分の意識の一部を深く、Cの世界側に潜らせた。
そのライの思考が向かう先はシステムとしてのゆりかご。
Cの世界そのものが精神に干渉するシステムであるのは、ライも理解していた。その為にライは現在、ヴィヴィオに干渉していると思われる“何か”を探す。
ライの思考の一部にビジュア
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ