第五十八話〜娘の願い〜
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ゆりかご・聖王の間
自分に向けて放たれる拳をライは見つめる。
刻一刻と迫る拳の動きに合わせる様にライは翼の推力を操作し、身体を後ろに下げる。
ヴィヴィオは追撃しようと突っ込もうとするが、それよりも速くライは動いていた。
身体を下げる勢いを使い、ライは空中で宙返りを行う。その際、ヴィヴィオが突き出していた拳を蹴り上げ、彼女を強制的に仰け反らせる。
そしてライはそのまま腰を捻り、半身をヴィヴィオに向ける。お互いの上下が逆転した状態でヴィヴィオは見た。ライが左手に持っているヴァリスの砲身が自分の鳩尾に向けられているのを。
『コンプレッション』
機械音声と共に銃口から魔力弾が吐き出される。ほぼゼロ距離で放たれたそれはこれまでとは違い威力も桁が違った。
無限とも言える魔力の供給を可能にしている今のライにとって、魔力弾一発に込めることの出来る量がそもそも違うのだから。
「くっ！」
咄嗟に虹色の魔力が魔力弾を包み受け止めるが、先ほどと違い身体を抜けるように衝撃が走る。単純に魔力の底上げを行っただけで、ほぼ異質と言っていいほどの防御を誇る聖王の鎧を抜いて、ダメージを通してくる攻撃にヴィヴィオはこの戦いで初めて恐怖を覚える、
これまでとは違う攻撃を受けたことで、一旦体勢を整える為に受けた攻撃の勢いを利用してライから距離を取ろうとするヴィヴィオ。
「！？」
しかし、それは叶わなかった。距離を取ろうとした瞬間、足が引っ張られるような感覚がしたと感じ、そちらを見ると“生身”のライの右手がヴィヴィオの左足を掴んでいたのだから。
聖王の鎧はオートで敵の攻撃から身を守ろうとするが、バリアジャケットはもちろん、魔力すら纏っていない手に反応する程見境がない訳ではない。
その為、ライは初めに生身の右手でヴィヴィオの足に触り、離脱しようとしたところで掴んだのだ。
「ッ」
もちろん、掴んだ時点でそれは攻撃と見なされてしまう。その為、掴んだ瞬間からライの右腕には聖王の鎧からの圧力を受ける。
押しつぶされる痛みは歯を食いしばりながら耐え、再びライはヴァリスのトリガーを絞る。
『コンプレッション』
二度目の衝撃。
今度こそ2人は吹き飛ばされるように距離を取る。
「「ハァハァ」」
2人は息を上げながらにらみ合う。
この時点でライの右腕は所々が内出血で青黒くなっていた。
一方ヴィヴィオは今度こそ攻撃が通ったのか、左腕でお腹を庇うように抑えている。
「「ッ！」」
お互いにらみ合いに意味がない事は理解していたため、すぐさま動き出す。
再開される攻防。刻一刻と鋭くなる攻撃。増えていく受け流しの回数。より苛烈になっていく戦闘の中、ライは脂汗を滲ませ
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