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第三十五話 居場所
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ラだが、続けて放たれた言葉にそのまま沈黙する。それはまさしく彼の言葉を肯定している。
「ふん……魔女はお前ではなかったのだな。いや、お前であってお前でない……か。不安ではないのか?」
「自分が自分でない感覚……ですか? 確かに不安になるときもあります。正直、あなたが言う魔女というのが本当に私ではないのかも分かりません」
紫苑はまだドイツ軍部隊の襲撃事件について不安が拭いきれずにいた。紫音が生きていて彼女がやったのか、それとも自分が無意識に行ってしまったのか。
ラウラが言うように自分の存在が希薄に感じてしまうことすらあった。
「でも、先ほども言ったように私には支えてくれる人たちがいます。彼女達がいるから……私は自分の居場所が、存在が確認できるのです」
子供の頃から自分の存在する意味を問い、学園に入学する頃にはそれすらも紫音という偽りの存在に塗りつぶされた。自分が何処にいるのか、何処に向かうのか、一人では潰れてしまいそうなときでも束や楯無がいたから今の自分がいることを彼は痛感している。
「なら……居場所のない私はやはり存在できないのだな」
「なにを言っているのですか? いるじゃないですか、あなたにどんなにキツく当たられても最後まで守ろうとしたお人好しが。彼はきっと、あなたに居場所を作ってくれますよ」
ラウラの沈んだ声に、紫苑は真っ先に一夏のことを思い浮かべる。
あの愚直なまでの性格なら、ラウラがクラスに溶け込むきっかけになるかもしれないと思えた。
「……ふん、だが教官の弟としてはまだまだだ。だから……私が扱いてやらねばならんか」
少なからず先ほどの試合で彼のことは認めたのか、不承不承といった様子でそれを受け入れる。それだけで、以前の彼女からは考えられなかったほどの進歩だ。
「お前のことは……まだ完全に信用したわけではない。やはりあの魔女はお前と同じ存在だったのは今回のことで確信できた。お前の意志がそこに無かったのは理解したが……お前を監視していればいずれ真実に辿り着ける気がする……せいぜい寝首を掻かれんように気をつけるんだな」
最初は胡乱な様子だったラウラも、紫苑と話をしている間に徐々に言葉がハッキリとしたものに変わる。
そしてラウラが最後に紫苑へと言葉を投げかけたあと、彼の意識が覚醒する。何分もの時間に感じられたラウラとのクロッシング・アクセスでの会話は実際には数秒だったらしく、状況は先ほどのままだった。
だが、直後にそれは一変する。ラウラの意識はまだ戻っていないものの、シュヴァルツェア・レーゲンの浸食が止まり本来の機能が戻り始めた。それを後押しする形で紫苑もデータの復元を行う。
やがて全ての作業が終わると、シュヴァルツェア・レーゲンは待機状態であるレッグバンドへ
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