十七 駆け引き
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おどけた笑いをナルトは返した。
雲の合間から月光が漏れる。月明かりに照らされながら、大蛇丸は妖しい微笑を浮かべた。
「貴方を、散歩に行かせないようにするのよ」
刹那、回廊に並ぶ柱の影から幾人もの忍びが姿を現す。叢雲が再び月を隠したために闇と化したその場で、音忍達にナルトは取り囲まれた。黒を身に纏っている忍び達の中で、彼の見事な金髪が妙に浮いている。
「俺一人に大層な事だな」
四方八方から飛び出してきた大蛇丸の部下達を見ても、ナルトは自若として顔色も変えない。それどころか悠々と音忍の数を数え始める。その様は、まるで彼らが潜んでいたのを最初から知っていたかのような風情であった。
危機的状況に陥っても相変わらず綽然たる態度を崩さないナルト。
そんな彼をうっとりと眺めながら、大蛇丸は甘い毒を孕んだような声で告げた。
「貴方相手じゃ、まだ足りないくらいよ」
「買い被り過ぎだ。なぜなら俺は――――」
突如として、雲が完全に途切れた。あれだけ空一面を覆っていた叢雲が、今は一つたりとも見当たらない。
天高く煌々と輝く月の光が、ナルトの全身を鮮やかに浮かび上がらせた。
「影分身、だからな」
そう言うなり、月光を背負う人物が忽然と消え失せる。
雲が散り、霧が消えていくように跡形も無く。
月明かりに照らされた回廊には、静謐と微かに棚引く白煙だけが残された。
大蛇丸は勿論、彼の周囲を取り囲んでいた音忍達が皆呆気にとられた顔をする。逸早く我に返った大蛇丸が肩を震わせた。
怒りによるものかと部下達が彼の様子を恐々と窺う。しかしながら大蛇丸は、おかしくてならぬとばかりにくつくつと喉を震わせ、先程までナルトが立っていた場所を驚嘆の眼差しで見つめていた。
「流石だわ…ッ!!私の行動を読んだ上での影分身…。完全にしてやられたわね…!」
「す、すぐに追手を差し向けます!!」
「無駄よ。影分身でさえあれだけ優秀なのよ?追い駆けたところで返り討ちに遭うだけ…。それに、おそらく彼本人は既に里から遠く離れた場所にいるわ…。意味無いわよ」
部下の進言を適当に却下して、大蛇丸は空を仰ぐ。夜空にて浮かぶ、冷たく澄んだ月を見る彼の瞳には憧憬の色があった。
真円を描いた月は、今や雲一つ無い空で煌々とした輝きを放っている。闇によく映える、近くて遠い存在。
黄金色に輝く月を掴むように手を伸ばす。空を切って握られた拳を見上げながら、大蛇丸は口角を吊り上げた。
「ナルトくん…。やっぱり私は君が欲しい……」
暁光の空に鳥の囀りが吸い込まれてゆく。火影岩の上で座っていた彼は、東から昇る朝日に目を細めた。
「こんな所でグズグズしてていいのかよ?大蛇丸
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