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渦巻く滄海 紅き空 【上】
十七 駆け引き
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落ちつき払い静かに笑むその様からは、子どもには到底持ち得ない大才を秘めていた。姿形こそあどけないものの、その根底には凄みすら感じ取れる。


息が、出来ない。酸素を求めて天井を仰ぐが、あるのは室内一杯に芬々と広がる香気のみ。自分が好む名香のはずなのに、その芳烈にかえって噎せ返りそうになる。
堪らず柱に身を委ね、大蛇丸はナルトから目を背けた。

これ以上踏み込んではいけない。真意を探ろうと瞳を覗き込めば、逆にこちらがあの青に引き摺りこまれる。



混乱した大蛇丸の脳裏に、取り留めの無い考えが次々と浮かび上がった。だが直後ハッと正気に返った彼は、気を持ち直そうと頭を振る。
(私としたことが……)
ほんの僅かでも気を緩めれば、ナルトという存在に魅入られる。あの人智の及ばぬところまで沈んでいる滄海の如し瞳に惹きつけられるのだ。

数秒目を合わせただけでこれだ。やはり欲しい。傍で一生仕えてもらいたい。そして出来る事ならば器に…。


熱に浮かされたかのような目つきで、大蛇丸は再度ナルトを見る。だがナルトはもう、大蛇丸と目を合わせようとはしなかった。
「……ええ。その通りよ。ナルトくんには感謝するわ」
もう一度彼の瞳の青を見たくて、大蛇丸は愛想笑いを浮かべる。彼の熱っぽく舐めるような視線にナルトは気づかないふりをした。
「ドスとキンの事なら心配するな――――ああ。それと暫く君麻呂を借りたいのだが?」
またしても重大な事柄をさらっと付け加えるナルト。彼の附言を聞き流しそうになって、大蛇丸は思わず口を尖らせた。

「…どういう事?」
「なに、ちょっとした散歩さ。すぐ戻る」

素知らぬ顔で言葉を返すナルトを、大蛇丸は凝視する。そして中忍の忍びでも耐え切れないであろう殺気をわざとチラつかせて、彼は尋ねた。
「散歩の付き添いに、わざわざ君麻呂を連れて行くって事かしら?」
「君麻呂の病気を抑える薬を作れるのは今のところ俺だけだ。俺が彼の傍にいたほうが都合がいいと思うが?それに君麻呂はまだ、器候補から外れてないんだろ。今動かなくなると不味いんじゃないのか?」
下忍ならば確実に気絶してしまう程の威圧感を物ともせず、それどころか大蛇丸の反論を許さないとばかりの一言一句がナルトの口を衝いて出る。更に彼の言葉には一切の濁りがない。

口を挟む暇さえ無かった大蛇丸は、押し黙る他なかった。














閉ざされた窓から月明かりだけが仄かに射し込む。
窓を背に二つ、その二つと向き合うように二つ…、そして一つ。合計五つの人影が格子窓にぼんやり映っている。
窓側にいるドスとキン。彼らを目に捉えた途端、すぐさま距離を取った再不斬と白。特に白はナルトを庇うかのような位置にて、二人を警戒している
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