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渦巻く滄海 紅き空 【上】
十六 内通者
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「…来ると思いますか?」
「さあ?どうだろうな」

麗らかな木漏れ日の下で囁き声がする。枝葉の間から洩れる陽光が、地に映る二つの人影でちらついていた。
双眸を閉じ、木の幹に背中を預けているナルトに、ようやく担当上忍の変化を解いた君麻呂が問い掛ける。問われた本人はまるで気の無い返事を返した。

「決めるのは自分自身。どれを選ぼうが選んだ本人の問題だ」
「…しかし後半の二つの末路はどちらにせよ『死』だと思いますが?」

「今、選んでくれ」と言ったものの、ナルトはドス達に考える猶予を与えた。尤も本戦の説明が終わるまでといった些細な時間内でだが。
ナルトと君麻呂は、多由也が闘技場から出て来るのを塔の外で待っているのだ。同じくドス達三人の答えをも。


ナルトが挙げた選択肢は『自身と共に来る』『大蛇丸の許に戻る』『逃げる』。
君麻呂が言う後半の二つ…その内の『大蛇丸の許に戻る』を選べば禁術の生贄にされ、はたまた『逃げる』を選べば音忍の追手に追われる―――どちらに転んでも行き着く先は『死』だ。


君麻呂の意を酌んだらしいナルトが瞳を閉じたまま口を開く。彼は取るに足りない僅かな希望を例として挙げてみせた。
「そうとも限らないよ?大蛇丸が気紛れを起こすかもしれないし、逃げて木ノ葉に匿われる可能性も無いとは言えない」
「僕ならそんな危ない橋は渡りたくないですね」
君麻呂の言葉に思うところがあったのか、ナルトはうっすらと目を開ける。頭上の木陰が淡い陰影を落とし、彼の表情を覆い隠した。

「…俺と共に来ても、危険には変わりないと思うが?」
まるで君麻呂の反応を窺うようにナルトは言う。それを耳にして、君麻呂は一瞬目を大きく見開いた。
淡い陰影から垣間見える青い双眸。
何もかもを吸い込み、何者をも捕らえ、そして果てまで続く滄海のような瞳。
その深い海の如き青が君麻呂の目線を再び捉える。昔から君麻呂の心を捉えてやまぬその青に、彼は小さな笑みを浮かべた。
「その危険を回避するためにナルト様は先読みをなさるのでしょう?貴方様の神算には目を見張るばかりです」
「…お前は俺に夢を抱き過ぎだよ」
君麻呂の心からの賛美に、ナルトは苦笑を返す。そしてどこか遠くを見据え、独り言のように淡々と呟いた。

「歴史はどう変わるかわからない。それと一緒で物事はどう動くかわからない。見た後じゃ遅いんだ。敵を見て矢を矧ぐなど、戦場じゃ命取り…。眼に映る光景は既に起こっている事だからな。だから見る前に先を読み、先手を打つ」
そこで一端言葉を切った彼は、全てを悟ったかのような風情で自嘲を漏らす。さながらそれは子どものなりをした老人のようだった。


「結局のところ、俺は自分のために先を読んでいる…。いや、読むことしか出来ないんだ。今までも、そして
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