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渦巻く滄海 紅き空 【上】
十六 内通者
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くアカデミー生がそこで修行してるんですよ。ですから病室の窓が割れる事などざらにあります。大方水浸しの床は水遁の術を暴走させたもの。窓は外から投げられた匕首によって割られたと判断すると思いますよ」


実際はカブトが室内で投げた匕首だが、傍目には外から放り込まれたと考えてもおかしくはない。普通ならそう推理するかもな、と納得し掛けた再不斬だが、相手の口調が気に入らず、彼は眉を顰めた。
「いい加減、その下手な敬語止めろ。胸糞悪い」
「仕方ないじゃないですか。あの『霧隠れの鬼人』と言われる再不斬さんとの共同任務ですよ?」
再不斬の言葉に苦笑しながら彼は前髪を掻き上げる。蒼みがかった灰色の髪がさらりと風に靡いた。



「任務じゃねえ。ただの芝居だ。大体、テメエはナルトに借りを返すため渋々協力してんだろ―が。ミズキ」



名を呼ばれた彼は走る速度を速め、再不斬の隣に並ぶ。長い刑務所暮らしで伸びた髪を鬱陶しそうに払いのけながら、ミズキは肩を竦めた。
「そりゃあ脱獄させてもらった恩があるしね。でも俺は元々ナルト君の協力者だったんだから渋々だなんてとんでもない。ある一件で木ノ葉厳重警戒施設に収容されちゃったけど、それまでは木ノ葉の情報を彼に流してたんだから…。ま、刑務所暮らしも無駄にはならなかったしな」
ミズキの何か含みのある笑みを見て、胡散臭そうにふんと鼻を鳴らす再不斬。彼の険悪な空気を感じ取ったのか、ミズキは笑みを引っ込めた。

ちらりと背後に視線を投げ、木ノ葉病院から優に距離を取ったと確認する。そして再び愛想笑いを浮かべ、言い繕うようにミズキは口を開いた。
「今回だって木ノ葉病院の内部に詳しくなければ、あのカブトとかいう青年を騙せないからね」
「【魔幻(まげん)此処非(ここにあらず)の術】だったか…。あの野郎、見事に引っ掛かってくれたな」



現在の居場所を別の場所だと錯覚させる幻術――【魔幻・此処非の術】。
この術をミズキは、木ノ葉病院を中心に、病院を取り囲む木々の区域に入った者に掛かるよう設定しておいた。勿論薬師カブトが来るであろう時間帯を見計らって。
対象者に掛けるのではなく特定の区域に入った者に掛かる、この【魔幻・此処非の術】は、はがねコテツや神月イズモといった中忍レベルの幻術。
故に、幻術知識を持つ者ならば簡単に破れる術なのだが、病室に侵入した際のカブトは柄にもなく冷静では無かった。
大蛇丸を出し抜けるかもしれないという高揚感と、大蛇丸に対する疚しさ。そういった複雑な思いを抱いていた彼は正に心ここに在らずであった。
だからこういった初歩中の初歩である【魔幻・此処非の術】にカブトはまんまと引っ掛かってしまったのだ。
サスケのいる病室だと思っていた所は、実はその一つ下の階。内装は同じだが、無人の病
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