暁 〜小説投稿サイト〜
或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
第七話 Phoney War
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ろう、砲で釣瓶打ちされたら文字通り全滅してしまう。
 そう判断した新城は迅速に後退の指示を出し、観測班が帰還するまでに、ほぼ後退の用意を完了させていた

「この二日で敵兵を200名程死傷させました。
そして浮橋自体も破壊に成功しました。
ですが筏を固定させる杭は無傷ですので作業自体には・・・」
 僅かに口篭った観測班長に新城は応える。
「いや、元々擾乱の為の砲撃だ。橋を破壊する事は余り期待してなかったからね。
それに対岸で指揮を出していた将校も退避する前に十数人程叩けた。それで十分だ。」
 ――これで少なくとも一日分は時間を稼げただろう。
新城が後どれ程時間を稼げるかを勘案していると漆原が声を掛けてきた。

「・・・これから大隊長が破壊させた村を通るのですか」
 北府からの難民を保護させてから腑抜けた様になっている。
「ああ、そうだ。それがどうした。それより今は戦争だ、君も自身の部隊の事を考えろ」
 一瞬漆原は背筋を伸ばし、何かを諦めた様に虚ろな姿勢に戻った。


二月十七日 午後第一刻 小苗橋
独立捜索剣虎兵第十一大隊 大隊長 馬堂豊久


「――よし、御苦労だった。しばらく休んでいてくれ」
米山中尉が書き留めた報告に目を通しながら馬堂少佐は導術士へ言った。
「しばらくは定時報告だけだ、今のうちに彼らを休ませないといかんな――米山?」

「導術の連中は全員、移動時は橇に載せています。
部隊間の導術使用は最低限に抑えておりますので当面はこれで」
兵站幕僚は如才無く応えた。
 ――後退している新城からも帝国軍の行動の鈍りが報告され、遅滞戦闘部隊も明日には合流出来る。――今の所、状況はこちらの目論見通りに推移しているか?
  否、と豊久は否定材料を打ち出す。
 ――水軍から送られる真室の状況報告は最短でも二十日以降になる、これまでの行動はこの情報が届いてから出なければ意味がない。

 この一ヶ月で慣れたシクシクと泣く胃を抑えながら橋を渡ると、目立つ軍服が見えた。

「あれは、近衛の軍装か?」
「えぇ、そうですね。天幕を張ってますな。それに随分と馬と資材があります。何故こんな所に?」
此方に気づいていたらしく指示を出していた一人が此方に歩いてくる。

「近衛衆兵第五旅団、旅団工兵中隊、中隊長田村孝則大尉であります。」
そういって敬礼をした。

「独立捜索剣虎兵第十一大隊、大隊長馬堂豊久少佐です。」
と馬堂少佐も答礼をする。そうすると大尉が書簡を渡してくれた。

「実仁親王殿下から少佐殿に宛てられた御返書です。
少佐殿の行動に殿下は敬意を感じておられるご様子でして。
大隊長殿のご要望はもちろん、我々にも志願を募り、築城作業を補助せよ、と。」

「第五旅団は何時頃、乗船し
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ