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第三十四話 黒い雨
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……が。
『ぉぉぉぉおおおお!』
簪の猛攻に晒されて、既に満身創痍になっていた一夏がそのミサイルを後ろから追い抜く形でラウラの前に躍り出たのだ。その過程で、ラウラを狙っていたものと一夏を狙っていたものがいくつか交差し、誘爆する。だが残った少なくない数のミサイルがそのまま二人へと着弾した。
(まさか、織斑君が彼女を庇うなんて……ね)
さすがに、あれだけ憎悪を向けてくる相手を助けるような行動を一夏が取るとは紫苑も想像していなかった。だが実際に目の当たりにして、鈴から聞いた彼に関する話などを思い出し、なるほどよく考えれば彼らしい、と思い直す。
(馬鹿な……負けるだけならいざ知らず、庇われただと……こんな男に……!)
着弾したミサイルが巻き起こした砂煙の中で、ラウラは一夏に庇われるというかつてない屈辱に、ただでさえ失いかけていたプライドが完全に崩れ落ちていった。
『馬鹿な、なぜ助けた!』
たまらず、一夏に向けて怒鳴りつけるラウラ。
『馬鹿はお前だ! 俺たちはペアなんだから助けるのは当然だろう!』
しかし、返ってきたのはラウラにとっては全く予想外の言葉だった。
訓練……という名の虐待のときも試合開始前もオドオドしていて全く話にならなかった男が、このときばかりは力強く宣言する。先ほどまでは歯牙にもかけなかった男の背中を急に大きく感じた。
『ふざけるな……私は貴様を……教官に汚点を残した貴様を許すつもりはないのだぞ!』
『そんなの今は関係ない、パートナーが危険だったら守るだけだ!』
--私の弟を見ていると、強さとは何か、その先に何があるのか見えるときがある。
(そんなもの……認めない! 落ちこぼれだった私を救ってくれたのは教官だ!)
--そうだな、いつか日本に行くことがあれば会ってみるといい。
(教官、なんでそんな表情で奴のことを語るのですか……! そんなの、あの凜々しい教官ではない)
--気をつけろ、あいつに会うときは油断するな。そうしないと……。
(私は奴を、教官を変えてしまう奴を否定しなければいけない……! でも奴は私を守って……何故だ? 私が弱いから? ふざけるな! 私に力があれば……力……が)
『ぁぁぁああああっ!』
認めたくない現状に混乱する中、その思考を遮るように突如としてシュヴァルツェア・レーゲンから電撃が放たれ、ラウラの意識は闇へと沈む。
彼女が意識を手放す前に聞いたのは、聞き覚えのないシステム音声だった。
Valkyrie Trace System …… Boot.
Form …… Zeroth Form.
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