Development
第三十四話 黒い雨
[4/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ン』だ。『黒い雨』の名を冠するこの機体だが、右肩に大型のレールカノンが装着されている他はワイヤーブレードやプラズマ手刀といった武装を有しており、遠近どちらでも戦える。だが、この機体の真価はある特殊兵器にあった。
(やっかいな機体だ……)
紫苑は試合会場に出て、ラウラの機体を見ながら独りごちる。
以前は束に渡されたシミュレータでいくらでも仮想戦闘ができたのだが、今はまったく連絡が取れないために旧バージョンのままだ。そのため、最新の機体が反映されておらず自身で知り得たデータのみでのシミュレーションしか行えていない。
もちろん、公開されているデータなどは一部でしかない。以前はその公開されていないデータも何故か反映されていたのだが……そこに関しては推して知るべし。もっとも、紫苑もその気になればそれを引き出すことができるのだが、さすがにそこまでは彼もしていない。
『ふん、ようやく来たか』
ラウラはオープン・チャネルで挑発するかのように声をかけてくる。それを聞いていた一夏は気まずそうな顔になるものの、この一週間でラウラが言っても聞かないのは身に染みているため特に何も言わずにいた。
『えぇ、お待たせしましたか』
紫苑としては舌戦をするつもりはないので、軽く流す。
申し訳なさそうな顔でこちらを見ている一夏に笑顔を返すことは忘れない。当然、一夏は顔を赤くして目を逸らす。もしこれが狙ってやっていることであるなら試合前の先制攻撃としては成功しているといえる。もっとも、言うまでもなく紫苑は無自覚であるが。
『あぁ、待ちわびた。貴様らに報いを与えるのをな! 貴様と当たるまで窮屈な思いをするかとうんざりしていたが、まさか初戦で当たるとはな』
『……えぇ、俺も!? っていうかなんでそんなに殺気立っているのさ!』
その言葉が、自身にも向けられていることに遅ればせながら気づいた一夏。まさかパートナーである自分まで攻撃対象になるとは夢にも……いや、もしかしたら少し思っていたのかもしれない。
一夏はラウラの転校初日、千冬に説教を受けた後にラウラの事情を聞いていた。
それは、彼にとっても思い出すことが躊躇われる過去。かつて自身が誘拐された際に姉が助けにきてくれたという事実は幼いころは英雄譚として認識していた。しかしそれが理由でモンド・グロッソ連覇を逃したということを知ったときは罪悪感に苛まれた。もちろん、誘拐犯が悪いのは間違いないがそれでも割り切れるものではなかった。
千冬を心酔するラウラが自分を恨むのは仕方ない、とある程度認めてしまっていたのだ。
だが、彼にとって解せないのはそれと同等かそれ以上の憎悪を対戦相手……西園寺紫音が向けられていることだった。一夏が知る紫音という存在は、慕われこそすれ恨まれるよう
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ