第八話
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その瞬間、最初に目に飛び込んできたのは、首元寸前でピタリととまったナイフだった。
「……え……なんで……?」
無意識にそう呟く妖夢。目の前の男は、ついさっきまでだしていた殺気なんて感じられなかった。
男は呆然としたままの妖夢の腕をつかみ体をおこす。持っていたナイフと銃も懐にしまい、もう襲ってくる様子はなかった。
「あなた……ほんとうに誰なんですか……?」
「……かわらないな……妖夢は」
「えっ……?」
男が言葉を発した瞬間、妖夢は何とも言い難い感覚に襲われた。よく聞いてみれば、どこかで聞いたことのあるような声だった。忘れるはずがない、どこか懐かしく温かい声……
「へんなことを考えるから、すきをつかれてやられてしまう。最後に手合わせした時も……そうだっただろ?」
「最後……!」
妖夢は数日前にこの場で行ったことを思いだしていた。あの時は、ある人物と手合わせをしていて、めずらしく長期戦に持ち込んでいた。その勝負も、自分がなにか別のことを考えた瞬間、足元をすくわれて首元にナイフを突き付けられた。
男はまるで、自分がその時手合わせをした相手かのように言っていた。だがそんなはずはない。その時の相手は……妖夢が愛していた相手は、もうこの世にはいないはずだ。
思考が崩れてなにも考えられない。口から出る言葉も、きちんとした単語ではなかった。
「なに……あ……」
「……ごめん。もうこんな姿してる意味ないよな」
男はそう言うと、ゆっくりとフードをはずし素顔をさらす。
そこには、妖夢が忘れることがなかったあの人物の顔があらわれていた。
「え……」
状況が飲み込めず、何もしゃべることができない。目の前にいるのは誰だと、自分に問いかけてしまう。しかし、何度も同じ答えが自分に返ってくる。
目の前にいたのは、紛れもなく里中俊司そのものだった。
「久しぶり……妖夢」
「あ……え……俊司……さん?」
そう問いかけると、俊司はコクリとうなずいた。
心が温かさで包まれる。無意識に涙をながしながら、ずっと彼のことを見つめていた。俊司はそんな彼女の涙をそっと拭き取り、やさしく頭をなでた。
「ほんとに……ほんとに……?」
「……ごめんな妖夢。いままで……ずっと会いに来なくて」
「そうじゃ……そうじゃない……です……よっ……ほんとにもう……会えないって……思って……」
妖夢は泣きながら俊司の胸に顔をうずめる。そんな彼女に感化されたのか、俊司もうっすらと目に涙をためながら、そっと彼女を抱きしめた。
「俺ももう会えないって思ってた。死んだ時……ほんとに後悔し
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