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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二話 没落の始まり
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教の手先であるフェザーンも和平には邪魔だとヴァレンシュタインは判断している。

「ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯が和平に踏み切ったのもあの男の存在が大きいと思っている。あの男を敵に回すのは危険だからな」
確かにそれは有る。和平を結べばあの男と戦う事は無くなる。改革を行い軍を再建するとなれば対外的には安定が必要だ。厄介な相手を無力化する手段は戦闘だけとは限らない。厄介な敵で有れば有るほど味方にすれば効果は大きい。ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯はそう考えたのだろう。

「貴族連合軍が敗北すればそれを理由に取り潰す。当然だが連中は抵抗するだろう。お前達はその討伐を行うことになる。まあ掃討戦に近いだろうが準備だけは怠るな」
「はっ」

オフレッサーがリューネブルクに視線を向けた。
「特にリューネブルク、その時は艦隊戦よりも地上制圧戦が主体となる可能性が高い、頼むぞ」
「はっ」



宇宙歴 795年 10月21日    最高評議会ビル    ジョアン・レベロ



最高評議会においてトリューニヒトが貴族連合軍が攻め寄せてくると伝えると皆が驚いたような声を上げた。地球教問題で協力している以上、両国が戦争になる事は無いと考えていたのだろう。戦争は地球教対策が済んでからと思っていたはずだ。貴族達がフェザーン方面に攻め寄せてくると伝えたら騒ぎはもっと大きくなったに違いない。

「では帝国軍が攻め寄せてくると言うのか? 帝国との協力など当てにならんな、トリューニヒト国防委員長」
ジョージ・ターレル副議長兼国務委員長が皮肉たっぷりに言葉を発すると最高評議会のメンバーがざわめいた。
「正確には軍ではない、貴族の有志による連合軍だ。帝国政府は関係ない、そう考えてもらいたい」

トリューニヒトがターレルの言葉を訂正すると彼方此方から不満そうな声が上がった。
「そんな事を言っても帝国が攻めてくるという事実は変わらんだろう。そうではないかな、トリューニヒト国防委員長」
ボローン法秩序委員長の言葉にも棘が有る、こいつらはトリューニヒトを蹴落としたくて仕方がないらしい。同じ思いなのだろう、ホアンが微かに苦笑していた。

「確かにその通りだ、ボローン法秩序委員長。帝国から貴族達が兵を率いて攻めてくる、十五万隻を超える大軍だそうだ」
“十五万隻”、彼方此方から声が上がった。皆が顔を見合わせている。私とホアンも驚いたような声を出した。トリューニヒトが言葉を続けた。

「貴族達は我々に勝つ事でその武威を見せつけ改革を阻止しようと考えている様だ。本来なら帝国軍がそれを止めなければならないのだが彼らは我々との戦いで大きな損害を受けた。今は再建途上で戦える状況にない。帝国政府には彼らの専横を止める術がないのだ。ブラウンシュバイク
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