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第三十二話 共犯者
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気になっているだろうし、ね。遅くなったけれど、僕は西園寺紫苑。それが本当の名前」
急に口調が変わった僕に驚いた表情を見せる。
「一夏達から西園寺……紫音さんのことは聞いてました。でもまさか……」
「男だと思わなかった?」
「……はい」
言葉を遮るように割って入った楯無さんの言葉に頷く。
「あの、あなたも知っていたんですか?」
「えぇ、知っているのは私と、あとは織斑先生だけね」
「織斑先生まで……」
よほどショックだったのだろう、そのままあれこれと考え込んでしまっている。
「許されることじゃないのはわかってるんだけど僕の話を聞いてから決めてほしい。僕のことを公表して学園から追い出すか、それとも……」
その先は敢えて何も言わず、僕はこれまでの経緯を話す。生まれのこと、紫音のこと、父のこと。もちろん全部ではないけれど、嘘はつかずに隠す部分は隠す。自分で話していてなんて波乱万丈な人生だと心の中で苦笑しつつ、一通り話し終えるとデュノアさんはいつの間にか涙を流していた。
それを見て、僕は彼女が僕のことを進んでバラすことはない、と確信した。あとは彼女の問題だ。
「僕は、君が望むならこのまま学園にいてもいいと思っている。もちろん、デュノア社やフランスに対する対抗策も考える、そこら辺は楯無さんや千冬さんに協力してもらうことになるけどね。でも、少なくともこのまま学園含めて隠し通すつもりでやれば三年の猶予があるから不可能じゃない」
「そうね、紫苑君なんて隠し通すどころかお姉さまなんて呼ばれて信奉者作ってるしね」
「ち、ちょっと楯無さん!?」
真面目な話をしていたはずなのに急に茶化されて僕は慌てる。
でも、おかげで少し緊張しすぎていたのが解れた気がする。それはデュノアさんも同じかもしれない。それを狙ってやったのか……いや面白半分だろうなぁ。
「僕はね、最初はただ命令だからこの学園にいた。でも、今は楯無さんがいる、フォルテさんやダリルさん、他にもお世話になった人が大勢いる。その人たちを騙している事実は変わらないけど、でも僕はいまこの学園に通い続けたいと思っている。デュノアさんはどうなのかな?」
「私は……わかりません。でも、今までまともに学生生活なんてしたことなかったから、この数日は楽しかったかな。戻ってもまた道具として扱われるくらいなら……私はここにいたいです」
その言葉を聞いて、僕は楯無さんの方を見ると彼女は満足そうな顔をしていた。僕もきっと同じような顔をしているのだろう。
「なら、僕たちは今から共犯者だね。そして……お互い理解し合えた本当の意味での友達、かな」
「……はい!」
力強い返事のあと、再び彼女は泣き出した。
よほど辛かったのだろう、気持ちはよくわか
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