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第三十二話 共犯者
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ば僕としてはそれは最後の手段だ。僕は、家の事情に振り回されてやってきた彼女のことを他人事に感じることができなかった。
もちろん彼女が織斑君を害したり、僕らへ敵対する可能性があるというのなら容赦するつもりはない。でも、話してみて為人が問題なかったら……友達になれるかもしれない。僕と楯無さんがそうであったように。
「敵対するなら強行手段も止む無し、けどまずは話を聞いてみたいかな」
「そ、私も同意見よ。ふふ、この子の状況、以前のあなたそのものだものね」
やっぱり楯無さんは御見通しだった。
「ん……」
そうこうしているうちに眠っていた少女から声が漏れる。どうやら目が覚めたようだ。
「気が付いたかしら、シャルル・デュノア君?」
「ここは……あ!?」
まだ頭がボーっとしているのか、自分の周囲をゆっくりと見渡す。やがて僕の存在に気付いて、先ほどまでの出来事を思い出したのか声をあげる。
「目が覚めましたか? お風呂場で気を失ってしまったので勝手ながら部屋に運ばせていただきました。あ、安心してください、服を着せたのはそちらの生徒会長ですので」
「更識楯無よ」
僕がそう言うと、手をひらひらさせながら自分の名前を名乗る楯無さん。
この時点で彼女はどうやら、全てが露見したことを悟ったようだ。その様子を見るに僕が男だということも覚えているだろう。ならば、男の僕がこの学園にいることを罵るくらいしてもおかしくない、にも関わらずそれをしなかったのは自身のことに思い至り自制したのかもしれない。だとしたら、冷静かつ客観的に物事を判断できる彼女のことはむしろ好ましいと思える。
「さて、まずは名前を教えてもらえるかしら? もちろん、本当の、ね」
「……シャルロット・デュノアです」
その後、彼女からこれまでの経緯を教えてもらった。
それは僕と楯無さんが想像した通り、経営危機を迎えたデュノア社による一世一代の賭けだった。愛人の子ということで隠されてきた彼女の存在を利用した茶番。そこに彼女の意思は微塵もない。本当の母親も死んだ今、彼女に味方はいなかった。
「……最後に一つ聞きたいのですが、あなたはこれからもデュノア社に従い続けるのですか? このまま露見すれば間違いなく国際問題、デュノア社も終わりですよ?」
「僕……私は、本当はこんなことしたくないんです。義母……本妻の命令なんて聞きたくなかった。でも、父にまで頼まれたら断れなかったんです、申し訳なさそうな顔で、泣きそうな顔で頼まれてしまっては……」
俯きながら、涙を堪えるように震えつつ、ぽつぽつと言葉を紡ぐデュノアさん。
その言葉は彼女の心からの言葉なのだろう、そう思えた。いや、信じたかった。
「なら、次は僕の話も聞いてもらえるかな? 君も
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