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第三十二話 共犯者
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びている。僕としては手入れも面倒だし、昏睡から目覚めたときに切ろうとしたのだけど、束さんが泣きそうな目で見るせいで切るに切れなかった。学園に戻ったら戻ったで楯無さんが嬉しそうに僕の髪を弄る。どうやら、彼女も短くするのは反対のようで、なし崩し的にそのままだ。手入れは楯無さんも手伝ってくれるから助かってはいるんだけど……。
「ふぅ……転校生、か」
身体を洗い終えた僕は、久方ぶりに浸かったお湯に惚けながら二人の転校生について考える。
衝撃的な出会いになった、ラウラ・ボーデヴィッヒ。どうやら彼女は転入初日で織斑君を引っぱたいたらしい。それも強烈な一撃で。もしかしたら僕とのことでイライラしてたのかもしれない、織斑君ごめんね。
千冬さんに聞いた話では、千冬さんのモンド・グロッソ二連覇がかかった試合の折に、織斑君が誘拐されてしまい、それを助けるために彼女は試合を捨てたらしい。千冬さんを崇拝するボーデヴィッヒさんは織斑君が原因と逆恨みしているようだ。完璧だった千冬さんに汚点を作ったことが許せないんだろう。
僕のときといい、少し思い込みが激しいみたいだね……。
そしてもう一人……シャルル・デュノア。経歴や状況から見てかなり怪しいんだけれど、証拠がない。とはいえ、僕が下手に動くと藪蛇になる可能性があるから様子を見るしかない。何かきっかけがあればいいんだけど……。
しばらくそのまま考え込んでいると、かなり時間が経過していたのか頭がボーっとしてくる。のぼせてしまったか、と僕は慌ててお湯から出て、フラフラと出口へと向かう。
そして……思いがけず浴場の扉が開き何者かが入ってきた。瞬間的に僕は手にしていたタオルで体の一部を隠す。
入ってきたのは金髪の少女だった。相手も、まさか人が入っていると思わなかったのか僕を見て驚いている。
「あ、ご、ごめんなさい!」
慌てて出ようとする彼女を、いまだ定まらない思考でボーっと見ながらその顔に見覚えがあることに気付く。まともな思考だったら、このまま彼女を行かせて何事も問題なく済んだかもしれない。しかし考えることが億劫になっていた僕は、脳裏に浮かんだことをそのまま口に出してしまった。
「……デュノアさん?」
「!? ……あっ!」
僕の呟きに明らかに狼狽したその少女は、足を滑らせそのまま倒れてしまう。
「あ、危ないっ!」
何も考えず、ただ反射的に倒れかけた少女を支えようと滑り込み……そのまま巻き込まれて僕も一緒に転んでしまった。
「……だ、大丈夫ですか?」
「は、はい……え?」
無理な体勢になってしまったこともあり、激しく倒れたがどうやら怪我はないようだ。僕も特に痛むところもなく安堵していると、彼女が驚愕の表情で僕のほうを見ている。その視
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