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IS<インフィニット・ストラトス> ―偽りの空―
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第三十二話 共犯者
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音と共に力の無い声が聞こえてくる。これも一夏のよく知っている声だった。

「箒か?」
「一夏……」

 声をかけるまでは明らかに沈んでいたが、顔を合わせると多少はその表情に力が戻っていた。
 
「反省分は書き終わったのか?」
「はい」
「よし、なら10分後にまた生徒指導室に戻れ」
「……わかりました」

 そのまま千冬は保健室を後にする。
 箒は現在千冬による指導中のため、一夏の見舞いにきたというより千冬へ報告に来たのだろう。だが、千冬が10分という時間を与えたことで見舞いの許可を得たことになる。

「一夏、済まなかったな。私があんなところで声をかけなければお前が……そんな状態になることもなかったかもしれん」
「……どうしたんだ、なんか悪いものでも食ったか?」
「な、なんだと!?」

 珍しくしおらしい様子の箒を見て、一夏は訝しげに声をかける。
 
「いや、ほら。お前がそんなこと言うなんて……。『軟弱者!』くらい言われると思ったんだけど」
「お、お前の中の私はどんなイメージなのだ……」

 概ね間違ってはいないと思われる一夏の指摘に、自覚がなかったのか箒は僅かに項垂れる。

「あ〜、いや。でもビックリしたぜ、いきなりあんな大声が聞こえてくるんだから」
「う、うるさい! だいたい、お前がさっさと倒していれば私があんなことする必要もなかったんだ……おかげで私は説教漬けなんだぞ、どうしてくれる!」

 いつもの調子が戻ってきた箒の様子に一夏はホッとする。やっぱり箒はこうでないと、と思うのだが半月もしないうちにあのしおらしい箒のほうがよかったかも、と思い直すのは別の話である。



 事件から数日、一夏の体調も回復し日常が戻ってくる。もっとも、その日常が平穏かというと決してそうではないのだが。

「セシリア、アンタちょっと一夏に引っ付きすぎなのよ!」
「まぁ、鈴さんこそわたくしに隠れてコソコソ何かやっているのではなくて!」

 もともとこの二人は争っていて、だからこそ決闘騒ぎまで起こったはずなのだが今では何故か名前で呼び合っている。お互いが認め合ったのだろうか……仲が良くなったかと言われると疑問ではあるが。

「い、一夏。大丈夫か? 無理はよくないぞ?」
「お、おう。大丈夫だ」

 箒は箒で思うところがあるのかほんの少しだけ一夏に対して素直になったようだ。既に部屋を出ており同居人ではなくなっているが、その直前に行った告白のような宣言の影響もあるのだろう。もっとも一夏はその意をまるで理解していないが。

「箒! それに一夏……なに鼻の下伸ばしてるのよ!」
「箒さん!? 一夏さんももっとシャンとしてください!」
「俺のせいなのか!?」

 そして箒のその僅かな優しさが、一夏
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