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碁神
子どもより優先する用事はありません。
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を優雅に組んでいる。
ちょ、怖ぇえ!

そう思った途端、イケメン――香坂美鶴先生は組んだ足を直してスッと立ち上がり笑顔を見せた。

「貴方が、囲碁部顧問の先生ですか?」
「は、はい! 顧問の椎名と申します。 お待たせしてしまって申し訳ありません」
「シーナ……?」
「はい?」

目を見開き、俺を凝視する香坂美鶴先生に少し身を引くと、ハッとしたように口を押さえた。

「すみません。 知り合いに同じ名前の人がいたので。 香坂美鶴です。 こちらこそ約束の時間を大幅に過ぎてしまって――」
「いえ、ちょっと立て込んでたので助かったくらいですよ。 香坂先生はお忙しいでしょうし、気にしないでください」
「そう言っていただけると助かります」

話してみると、礼儀正しいし凄い人なのに全然鼻にかけたところも無くて良い人だ。 笑うと印象も柔らかくなるし、俺の緊張も大分解れて来た。

「それでは、子ども達も楽しみにしていますから早速向かいましょう。 ご案内します」

少しでも良い印象を持ってもらえるように、一番女子生徒に評判が良い渾身の笑顔で笑いかけて、香坂美鶴先生が出やすいようドアを開け押さえた。
……が、香坂美鶴先生は何故か固まっている。

「あの、香坂先生?」
「あ、す、すみません」

慌てて香坂美鶴先生が部屋から出る。
……クールそうな顔してドジっ子なのだろうか? なんというギャップ。 きっと女の子はそのギャップにメロメロになるに違いない。
……いや、何か顔が赤いな。 体調が悪いのだろうか。

「もしかして、どこかお加減が悪いんですか?」
「いえ、そんなことは――ああ、少し、疲れが溜まっているのかもしれません。 でも大丈夫ですよ」
「そうですか……無理せず、体調が悪い時は教えてくださいね」
「ええ、そうします。 ありがとうございます」

囲碁部の部室は職員室から少し遠い。
運動部の掛け声が校庭から微かに聞こえてくる。 殆どの子はもう部活へ行くか帰ったのだろう、廊下を歩く生徒の数は少ない。
そんな静かな廊下で、気まずい沈黙が無いよう気を使ってくれているのか、香坂美鶴先生は何かと俺に話しかけてくれた。

「椎名先生は随分お若いようですが、おいくつ何ですか?」
「俺……僕、いや私は23ですよ」
「『俺』で良いですよ。 23なら私と同い年ですね」
「はは、すみません。 緊張しちゃって。 そうなんですよ。 前に先生のプロフィールを見させていただいた時に同い年なんだなーと思いました」
「私のプロフィールを?」
「ええ、実は香坂先生のお父様のファンでして」
「……ほぉ? コホン、ところで、椎名先生は何の教科を担当されているんですか?」
「国語ですよ。 昔から本が好きで。 好
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