子どもより優先する用事はありません。
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そんなこと言って良いんですか?」
「良いんだよ。 一番大事なことはな、テストで点をとることじゃなくて、そのためにどれだけ努力したかってことなんだ」
「……」
「やりたいことを我慢して、たくさん苦しんで、壁を乗り越えた経験が、社会にでて新しい壁にぶつかった時に必ず助けてくれる。 だから、頑張ったお前は何も引け目に思う必要無いんだよ」
「先生……」
福田は目から鱗の様な顔をしてポカンとしている。
畳み掛けるように俺は言葉を続けた。
「次に、結城のことだが――あいつは責任感が強い。 嫌味は言ったかもしれないが、クラスメイトがイジメられるような事があれば学級委員として必ず助けてくれる。 限度をわきまえているからエスカレートすることは無いだろうし、夏休みが明ければテストの事なんか皆忘れてるよ。 明日、俺も軽く話そうと思うけど、多分そんな心配する必要は無いと思うぞ」
「そう、でしょうか」
「ああ、もう少しうちの学級委員様を信じてやれ。 福田の納得いく言い方で言えば、自分が原因でイジメが起きた場合、内申に響く可能性を考えてあいつは絶対に問題を起こさせん。 仮に、もしもエスカレートすることがあれば、俺は必ず福田の味方になるよ。 だから、大丈夫だ」
「あ――ありがとう、ございます……!」
泣きながら礼を言う福田に、ニヤリと悪戯っぽく笑いかける。
「福田は美術が得意だろう。 勉強が苦手でも、立派な才能があるじゃないか。 ノート点検の時、密かに楽しみにしてるんだぞ?」
ノートの凄まじい落書きのことを指摘すると、ブフッと噴出して福田に笑顔が戻った。
「あははっ、次の提出日楽しみにしてて下さい。 超大作描きますから!」
● ○ ●
涙ボロボロだった福田が落ち着くのを待ってから急いで職員室に戻る。
約束の時間を20分もオーバーしてしまった。
「や、山口先生! 香坂先生はもういらっしゃってますか!?」
「椎名先生。 もう客室で待ってますが、仕事が原因で遅れたみたいで来たのはついさっきですよ」
「そうですか……よかった」
「それより、大丈夫でしたか?」
「ええ、生徒の方はもう大丈夫そうです。 ありがとうございました、本当に助かりました」
「いやいや、困った時はお互い様って奴ですよ。 それじゃあお客さんも待ってるでしょうし」
「ええ、行って来ます」
早足で職員室に隣接した客室へ向かう。
深く深呼吸をして、ドアをノックする。
『どうぞ』
ドア越しに涼やかな声が聞こえた。
あー緊張で心臓ドキドキしてきた……。
「失礼します」
ドアを開けると、目付きが鋭く全体的に冷たそう……ゲフン、理知的な印象の凄いイケメンがいた。
高そうなスーツを完璧に着こなし、長い足
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