暁 〜小説投稿サイト〜
皇太子殿下はご機嫌ななめ
第47話 「できる事と、やりたい事と、やるべき事」
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
のだ。

「……これは……」
「帝国のトップ。好き勝手、やりたい放題しているように見える皇太子ですら、そうなのだ。ままならないものだよ」

 あの皇太子を比較の対象として、持ってくるのはどうかと思うが、理解しやすいだろう。
 それに例はそれだけではない。

「他にも似たような例はある。例えばヤン・ウェンリー君もそうだな。彼は歴史学者になりたかったそうだ。しかし歴史学者としては並みだろう。参謀として優れていてもね。本人からしてみれば、不本意なものだ」

 そして君は軍官僚だ。
 どれほど前線指揮官として、奇跡の様な勝利を望んでも、叶えられる事はない。
 しかし官僚としては、ヤン君は、君の足元にも及ばないだろう。

「六個艦隊を生き残す。できるだけ、負けを少なくする……。良いでしょう。補給を完全に行い。あの皇太子の思惑を粉砕してやりましょう」

 フォーク君が笑う。
 良い笑みだ。方向性が変わったな。
 そう、やり方こそ違うが、打倒皇太子だ。
 武断主義でない、本質的に文官である皇太子に勝てるのは、同じく文官として優秀な者だ。
 戦場以外で勝つ。
 そしてそれができるのは、軍内では、君おいて他にはいない。
 自覚していないだろうが、君の政治的な手腕だけだ。

 ■クロプシュトック領内 ヨハン・フォン・クロプシュトック■

 天は人の下に人を造らず、人の上に人を造らず。
 しかして人間社会を見渡してみれば、その有様、雲と泥のようだ。
 人の価値は学問の有無にある。

「だから学問に勤めて切磋琢磨せよっ!!」

 農奴の子らを集めて、声を張り上げている。
 いままでの帝国であれば、この様な物言いは政治犯として、捕らえられてしまうだろう。

「しかし今の帝国は違う。帝国は変わったのだ。そしてこれからも変わる帝国にあって、諸君は生きねばならぬ。その時必要になるのは、学問である。いいか、それを忘れるんじゃないぞ!!」

 強引に無理矢理、農奴の子らを学校に通わせる。
 その許可を宰相閣下から頂いた。

「皇太子殿下は、あのお方は! 諸君の将来を考えて下さっている。これは諸君が得た機会だ。無駄にするんじゃないぞ」

 いずれ帝国全土で行われるだろう。農奴の子らに対する教育。
 そのテストケースとして、まずはクロプシュトック領内で行う。予算は親父からぶんどった。
 泣きそうな目をした父から、奪ったのだ。
 未来への投資だ。がたがた抜かすな、と強引にもぎ取ってやった。

『……ヨハン。変わってしまったのか……そんな子ではなかったのに、口も悪くなってしまったのだな』
『ええい。うっとうしい』

 口調の悪さは、皇太子殿下譲りだ。なんか文句あるか?
 農奴の子らの中には、自分の名も
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ