第十章 イーヴァルディの勇者
エピローグ エルフからの問い
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の平を動かし、再度ルイズの頭に手を置く。
サラリとした髪に指を絡ませ、士郎は背を曲げ、頭上を仰ぐ。
瞳には満点の星空が映っている筈であるが、士郎はそれを見てはいない。
見ているものは、ほんの数時間前の光景。
それはエルフを退け、タバサの母親をアーハンブラ城から連れ出そうとした時のことだった。
ルイズたちから士郎は休憩しててと言われ、一人脱出のための足を探すかと辺りを散策していた時のことであった。
―――ビダーシャルが現れたのは。
ビダーシャルの姿は、まるで野盗に襲われた旅人のようにボロボロであった。
だが、足はしっかりと大地を踏みしめ、士郎を強い視線で見つめていた。そこには先程の戦闘で負っただろう怪我を感じさせなかった。
また、そこには戦闘中に見せた憎しみ、怒り―――そして戦意もなかった。
『―――続きをやるつもりか?』
『……分からない貴様ではない筈だ』
ビダーシャルの物言いに、士郎は腰のデルフリンガーに伸ばしかけた手を止めた。
『それでは、何の用だ?』
『……一つだけ、貴様に聞きたいことがある』
離れた位置に立つビダーシャルは、顔を伏せ、微かに震える声で問いかけてくる。
『……聞きたいこと?』
『貴様は―――』
―――夢を……見ている……
……夢でしかありえない……光景……。
ラグドリアンの湖畔。
オルレアン屋敷。
その中庭、テーブルを囲み、今は亡き父と、心を無くした母が、楽しげに、幸せそうに笑っていた。
笑いながら、父と母は自分を見つめている。母が街で自ら選び買ってきてくれた人形に、『イーヴァルディの勇者』を読んであげているわたしを。
笑顔を浮かべ、朗らかな声で読むわたしを……。
もう、決して戻ってはこない光景……。
父はもう、いない……。
あんな笑顔を浮かべる母も、もう、いないから……。
屋敷から執事のペルスランが近づいてくると、客人の到来を告げた。母の許可を受け、ペルスランが客人を中庭に連れてくる。
学院の仲間たちが中庭に向かって歩いてくる。
ルイズとキュルケは、互いに何かを言い合っている。そんな二人の後ろで、ロングビルがからかうような笑みを浮かべて更に二人を煽っていた。少し離れた位置で、ギーシュとマリコルヌが手に花束を持ち、所在無さ気に辺りを見渡している。
タバサの目の前にまで来ると、キュルケとタバサが競い合うように手に持った紙包みを差し出した。その様子に笑いながら、タバサは二人が差し出す紙包みを受け取る。紙包みの中には、たくさんのお菓子が詰め込まれていた。
タバサがお菓子を掴み口の中に入れる。口を動かしていると、後ろに立つロングビルが、懐から取り出した髪
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