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《SWORD ART ONLINE》ファントムバレット〜《殺し屋ピエロ》
そして日常
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で不利益を被りそうだ。さわらぬ神に祟りなし。ここは見ないふりを決め込むのが利口ーー

「おいおい、ゲロるなよ朝田ァ」

Uターンしかけた体が凍る。振り返り、うずくまる人影を凝視して俺はハッと息を飲んだ。細い、折れてしまいそうな細い体に制服とマフラーを巻き付け、地味なメガネで顔を隠す少女。普段つまらなそうに伏せられている顔は、文字通りの真っ青で、遠藤の言うとおり本気で吐きそうだった。

朝田詩乃。

ある意味、学校で彼女ほどの有名人はおるまい。それほど彼女が5年前に関わった事件は凄惨で、インパクトのあるものだったのだ。

銀行強盗を当時10歳の少女が撃ち殺す。

その少女こそが朝田詩乃だ。冗談ではなく、正真正銘これが事件の真相だった。俺はこの出来事を必要以上に調べていた。いや、ずっと前から”知っていた”。思い出すだけでも忌々しい事件である。

故に彼女は学校で孤立し、影では人殺しと罵られながら生活していた。その苦痛は俺の想像を絶するものに違いない。しかも、放課後にこんな恐喝まがいのイジメを受けているとは知らなかった。

考えるより先に、体がつんのめるようにして路地の間に入っていった。

「なぁ、お前らなにやってんの?」

途端に3つの視線が突き刺さる。

しまった、と心の中で絶叫するも、時すでに遅し。真っ白の頭に具体的な説得方法などこれっぽちも浮かばず、ただ地雷を踏んでしまったという感覚だけがゆっくりと点滅していた。

「なんだ、道嵩かよ。脅かすなバァカ」

遠藤はそんな俺を見て、心なしかほっとした様子で言った。確かに一般人に見られでもしたら好印象はもってもらえないだろう。逆に自分は彼女にとって、どうとでも丸め込める男子としか認識されていないらしい。その事が少しだけ癪に触った。

「......悪かったな。んで、朝田囲んでなにやってんだ? 見た感じ大分具合悪そうだけど」

ちらりと詩乃を一瞥する。苦痛で潤んでいる瞳と一瞬目があった。

「はん、例の発作ってやつだろ。指をピストルの形にするだけでガタガタ震え出すんだからな。超うけんだけど」

なるほど、と納得する一方、遠藤達の根性の曲がり具合に呆れた。詩乃はあの日以来、銃を極度に嫌う風になった。その形を見るだけで発作のように体が震えだし、ひどい場合で嘔吐、気絶することがあるらしい。世界史の授業で一度発作を起こしたのを見たことがある。

失礼な話だが、俺は詩乃という人間が可愛そうでならなかった。彼女は悪くない。強盗から皆の命を守ろうとした結果、殺人という手段に至ってしまっただけだ。今も昔も知らんふりをして隠れる俺よりよっぽど勇敢である。

ーーその仕打ちがこれなのか!

「おい、そういうのマジでダサイから止めろよ。楽しいかよ? こんなこ
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