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One more glass of Red wine
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One more glass of Red wine
洒落た都会のレストラン。そこにいるのは二人の若い男女。二人共正装で白いテーブルに向かい合って座っている。既に料理も食べ終えグラスを傾けて話をしている。
「それが結論なんだな」
「・・・・・・ええ」
女が先に答える。彼女は俯いている。その前には空のグラスがある。紅いワインが底に微かに残っている以外は中には何もない。ガラスにキャンドルの弱い光が照らされている。それが薄暗い店の中での僅かな光になっていた。だが彼女はそれを見ずに話をするのだった。
「同じだと思うけれど」
「ああ」
男はその言葉に頷く。彼はグラスを手にしていた。そこには紅いワインがある。しかしそれを見ずに口もつけずに彼女の言葉を聞いているだけだった。
「そうさ。もう隠さないさ」
「やっぱり」
「言い訳になるけれどな」
彼はそれでも言った。
「こうなるとは思わなかったんだ」
「そうだったの」
「遊びだったんだ」
言い訳じみていた。言い訳はしないと言っても。
「その遊びがな。こうなっちまうなんて」
「そうね」
女は俯いたままその言葉を聞いている。二人の間には花瓶に挿された二本の紅い薔薇がある。ワインと同じ色の薔薇が。しかしその薔薇も目には入っていなかった。ただそこにあるだけであった。二人に顔を向けて。
「私も気付かなかったけれど」
「そうだったんだ」
「偶然見て。今確かめたけれど」
「済まないな」
「いいの」
けれど女はそれは許した。
「私も。ずっと忙しくて会えなかったから。いえ」
言うのだった。言えなかった言葉を。
「会いたくはなかったのね。貴方に」
「俺にか」
「擦れ違いが続いていたから。だから」
今までは言えなかったのに今はそれが言葉になる。それは終わりがもうすぐそこまで来ているからだというのが自分でもわかっていた。
「こうなってしまったのね」
「さよならだよな」
男は言った。
「これで」
「そうね。ここで終わりね」
女もその言葉を受けて言う。
「何もかもがここで」
「あのチークが終わったら」
男は不意に店の真ん中に顔を向けた。そこではピアノでチークが奏でられカップルが踊っていた。かつては二人もあそこで踊った。懐かしい場所だった。
「お別れだな」
「ええ。そうしましょう」
こくりと頷く。その時はもう近付いていた。
「けれどさ」
彼はここでワインのボトルを手にして声をかけてきた。
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