暁 〜小説投稿サイト〜
碁神
俺の人生順風満帆です。
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で任期が切れるのだからと、自転車で30分程の少々離れたボロアパートを借りて暮らしている。 学区内だが、近くに子どもの住んでいる家が無いので意外と子ども達には見つかっていない。

 暖かかった春が終わったと思ったらいきなり真夏のような暑さになり、日中外に出るとジリジリと身を焼く直射日光にうんざりするが、それでも出退勤時はまだ過ごしやすい気温だ。
 爽やかな初夏を味わえるのは自転車を走らせるこの時だけなのだが、今日の仕事のことや子ども達のことを考えながら鼻歌まじりに自転車をこぐとあっという間に到着してしまう。

 帰宅してすぐに手洗いうがい。 子ども達に言ってることは俺も実行しないとな。
 その後部屋着に着替えてパソコンの前に座った。 

 さて、趣味の時間だ。

 俺の唯一の趣味。 それは『ネット碁』を打つことだ。
 小学校低学年の頃に流行った囲碁漫画に影響を受けてルール本から詰め碁集等、様々な本を買い込み猛勉強した。 ……ゲームは説明書と攻略サイトを熟読してからやるタイプなんだ。
 そうして完璧にルールを把握したと自負してから、いざ打とう!という段階で身近に碁を打てる人が居ないことに気づいてしまった。

 せっかく猛勉強したのだ。 どうしても打ちたくて、でも碁会所なんかには怖くて入れない。
 そんな俺が出会ったのがネット碁だった。
 最初は負けに負けた。
 子どもらしい傲慢さで自分を強いと思い込み、勝率の高い人ばかりに対戦申し込みしまくったのだ。 負けるのは当然である。
 だけど、余りにも実力差があったので指導碁を打ってもらえたり、俺の年齢を見た常連の人が可愛がってくれたりしたおかげで確実に実力をつけていくことが出来た。

 自分の実力が分かってからは、必死で追いつこうと頑張った。
 我武者羅に努力しているうちに、指導碁を打ってくれていた人達にも勝てるようになって、一年後には負けなしになった。
 別のネット碁サイトを紹介してもらって、そこでもしばらくすると負けることが無くなり、小学校高学年になる頃には自称プロの人以外には負け無しだ。

 それからプロのユーザーが多いと評判の上級者向けネット碁サイトに入り浸って少しでも時間があればひたすら打ったり、プロの棋譜を見て勉強したりしていた。

 そして、高校に入学した15の時から現在、23にいたるまでの間は連戦連勝の無敗! これ、密かな自慢である。
 自称プロにも割と余裕を持って勝てるし、たまにヒヤリとすることがあっても駆け引きを楽しみながら勝利への道筋を導きだすだけの力はあった。
 囲碁の大型掲示板なんかでも俺のハンドルネーム『Si-Na』は有名で一体彼は何者なのかと騒がれている。
 チャットする時間が惜しくて基本的に挨拶しかしてなかったから、ミステリアスな
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