第四章
名前が気になった彼は眠気に身を任せ怒りを覚える。
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ったが……《無囲色》が発動した。
《無囲色》。僕がそう呼ぶそれは、周囲への興味を失う事で、一部の感覚器官の機能を欠落させたり、劣化させることもできる便利能力。まあ、完全には制御できないから、うっかりすると脳までもが機能停止して死ぬかもしれない。そこまで言ったら無囲色ではなく、それはもう《無意識》だ。
主に視力の色素認識能力に支障がでるからこその《無囲色》なのである。
――次は耳。聴力を失っていく。これはもう性格云々ではなく、人間としての劣化。生物としての退化に他ならない。僕はもう救いようがないのだと、そう思わせる。
俺はそんな劣化した目で由比ヶ浜結衣だけにピントを合わせていた。
ピント……それは己の世界感の共有と言えただろう。
由比ヶ浜結衣。彼女だけを見つめると分かることがある。
それは、視線の先……。無囲色を持ってしても浮かび上がってくる人物像。
何となく察してはいたけれど、まさかね……。
僕はずっと由比ヶ浜にクッキーをあげたいと思わせた人物が気になっていたが、どうやら見当がついた。
そもそも由比ヶ浜はずっと気にしていたので、これは言うまでもないのだが――。
静けさの穴に潜んだ濁った眼。しかし、そんな彼は到底のものには有せない魅力が確かにあるだろう。
……比企谷八幡。それはお前だ。
そう静かに告げると、俺は視界を元の場所に移し映した。
《聴力》も元に戻る。しかし、一番肝心なところが元に戻らない。
見えても仕方がない。聞こえても仕方がない。
そもそも失えるものが僕に必要であるわけが無いのだった。
俺。それから自分を鈍感に装った男は、速足で部室へと向かった。
こいつも俺も、今現在だけは何にも考えちゃいない。
こいつといると、脳も何時しか消えそうだ……。
――って言うか材木座はどこにいるの?
完全にスルーしていた。おおよそ由比ヶ浜が来たから気配を殺して置物のように佇んでいた、と言った所だろう。
置いてけぼりにしたのは迂闊であったが同情はしない。自業自得だ。
× × ×
そこには静けさがあった。
比企谷八幡と俺しか存在しない異質な空間。あんまり静かすぎるのでひょっとしたら皆死んだんじゃないかとも思わせるが、そう思った途端に外から野球のボールをバットで打った小気味のいい音がするから現実ってのは理不尽だと思う。思った途端に変わった途端に起こった途端に覆す。
仮に現実が擬人化したらぜったい性格悪くてぼっちだろ……。
「……はあ」
ため息も吐きたくなる。
「……う、うんっ……」
気まずそうな態度で咳払うやつがいる。
確かに彼は気まずいかもしれ
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