六幕 張子のトリコロジー
10幕
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「人間をいじめないで!!」
ミュゼとミラの頭上に透明な水球が出現し、落下する。ミラには何ということはない、ただの水。だが全身に火傷を負って皮下を剥き出しにしたミュゼの肌には激痛をもたらす。
ミュゼが悲鳴を上げてのけぞった。その隙を逃さず、ルドガーが骸殻の槍でミュゼをミラの上から追い払った。
それでもまだ、諦めの悪いミュゼは、ネガティブホルダーをルドガーへ連発する。槍で捌いていたルドガーだったが、三発目で手元を撃たれて槍が手から飛んだ。
(ルドガーがコロされちゃう!)
――しかし、フェイがさらに精霊術を使うような事態は、起きなかった。
ミラが、ルドガーの手から落ちた黒い槍を拾い、後ろからミュゼに突き刺していたのだ。
「姉さんが――――悪いのよ」
父から冷たくされて育ったフェイでさえ、ぞっとするほど黒い声。
「お、前、なんか、に」
「『お前』じゃない! ミラよッッ!」
ミュゼは絶叫し、再びミラに掴みかかろうとした。だがその前にルドガーが動く。刺さったままの槍を掴み、ミュゼの体にさらに深く突き刺した。
槍がミュゼの腹を貫通した。穂先には黒煙を上げる歯車――時歪の因子《タイムファクター》。
ルドガーが槍を抜くと、歯車は穂先で呆気なく割れた。天地に亀裂が入り、割れていく。
「ミラ!」
「お姉ちゃん、だめ!」
エルがミラへと駆け出そうとした。姉が少しでも傷つく可能性があるなら、行かせるわけにはいかなかった。
フェイはエルを押し留めると、エルの代わりにミラの下へ翔けた。
呆然と天に上げたままのミラの手を、フェイが掴んだ。
直後、ガラスが割れるように、一つの世界が崩れて落ちていった。
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