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第二十八話 ジャーナリズム
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今日はせっかくのお客さんなんで付き合ってください。はい、どうぞ」
「ありがと」
「……」
それでも僕の淹れた紅茶だけは気に入ってくれるのか、目の前にカップを置くと少しだけ表情が和らいだ気がする。
「ところで、口調は戻したの?」
「えぇ、鈴ちゃんと二人きりのときはあのままでもいいと思いますが。ただ、口調は変えなくても要は私の気構え次第だとわかりましたので。それに……私のあの話し方が騒動の種になりそうな気がしましたので」
「あ〜、もしかしてあのイギリスの代表候補生みたいに紫音さんのことお姉さまって言ってる連中?」
一応は言葉を濁したものの心当たりがあったのかまさに図星をついてきたので、僕は思わず苦笑する。それを肯定ととったようで彼女もそのシチュエーションを想像したらしく顔を顰めた。
「昨日もすごい剣幕だったわよ。『お姉さまを侮辱するのですか!』って」
オルコットさーん!? 僕の知らないところで、僕のことで喧嘩するのは止めてほしいんですけど!
「まぁ、でもわからないでもないけどねぇ。なんていうか紫音さんって頼りになるお姉さんみたいな雰囲気が確かにあるし」
本当はお兄さんだけどね。それを楯無さんに言ったら、僕の性別を知ったうえで見てもやっぱりお姉さんだって言われたけど……うぅ。
「簪もよかったわね、実家でも部屋でも頼れる姉がいるようなもんじゃない。羨ましいわよ」
「……羨ましい?」
僕らの話についていけなかったのか、ただ紅茶を飲んでいた簪さんが急に話を振られて戸惑っている。カップの中身が空になっていたのでこの隙におかわりを用意する。
「……どうも」
「そ、こんな気が利くし美味しい紅茶淹れてくれるお姉ちゃんだったらあたしも欲しいわよ」
少し気が緩んだのか僕にも素直にお礼を言ってくれる。そんな些細なやり取りでも嬉しい。
「それに、実の姉はロシア代表で生徒会長でしょ? 勉強もわからなければ教えてもらえるし、操縦だってそう。恵まれてるわよ?」
「そんなこと……ない。いつも比較されて……だから自分の力で追いつかないと」
簪さんの表情は暗い。やはり楯無さんに対してコンプレックスを抱いているようだ。いや、確かに楯無さんはシスコンだけどそっちの意味ではなく純粋に劣等感という意味で。
「何も一人の力だけで追いつく必要はないのではないですか?」
「才能のある人にはわからない」
言葉を挟むべきか迷ったけれど、彼女には伝えたいことはいっぱいあったし受け身になるだけは止めたばかりなので、思っていたことを話すことにする。
彼女も棘はあるもののしっかりと言葉を返してくれる。このやり取りすら今まではなかったのだから、それだけでも前進だと思えた。
「私に才能があるかはさ
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