Development
第二十八話 ジャーナリズム
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薫子さんに目をつけられる、という厄介なことになってしまった翌日。
いくつか対応策はあるものの実際にどれを実行するかについては決めかねていた。
一番無難なのは傷があって見せたくない、といった言い訳だろうか。女子なら説得力のある理由になると思う。
ただ問題もあって、一つはどうやって信じさせるか。まさか本当に傷をつける訳にもいかないから、言葉だけで信じてくれればいいけど、駄目なら特殊メイクか何かをする必要がある。
加えて、この嘘を吐くのはちょっと後ろめたい気がする。間違いなく気まずいことになるからだ。もちろん、人の秘密を探ろうとする薫子さんに対して思うところがない訳ではないけど、僕の場合は本当に知られたらまずい秘密を抱えているだけにどうしても罪悪感を感じてしまう。
しかし、僕は薫子さんを甘く見ていたのかもしれない。そんな罪悪感など吹き飛ぶほどに、彼女は精力的に動いていた……。
「で、これが発行前に差し押さえた記事よ」
僕は楯無さんに呼ばれて彼女の部屋にいた。
どうやら既に記事を書き上げていたようで、それを察知した楯無さんが生徒会命令で差し押さえたらしい。薫子さんは断固拒否したようだけど、部長に予算減額をチラつかせたら部員全員が敵に回ったとのこと。相変わらず手際がいいというか……。
「はぁ……昨日の今日で仕事が早いね……でも助かったよ、ありがとう楯無さん」
「ま、私も共犯だしね。それに今回のことはちょっと目に余るし……まぁ、見てごらんなさい」
そう言って、楯無さんは僕に記事の原稿を渡してくれた。
「えっと……」
そこには『学園で一二を争う有名人、西園寺紫音の謎に迫る!』という題名で僕が人前で着替えをしなかったり、大浴場を使用しないことについて大げさに書きたてており、その後にいくつかの予想が書かれていた。
@実はあの胸はパッドである
惜しい! ほぼ正解。オーバーテクノロジーな気がするシリコンパッドだけど。
A実は男である
正解だよ! ってなんでさ!? いや、確かにそうなんだけどどういう発想でそこに行きつくんだ……いや、織斑君という男性操縦者が現れた以上あり得ないことじゃなくなったんだろうけど。
B実は生えてない
何が!?
その後も読んでいて頭が痛くなるような内容が続いていた。
そもそも、この学園の新聞部は基本的に事実に基づいた記事を書いており生徒や先生の信頼も得ていた。その中で去年から新コーナーとして定着しているのが薫子さんが担当しているゴシップ記事で、僕のこともここで書かれている。
このコーナーだけは暗黙の了解というのか、脚色や捏造を前提として書かれていることが周知されている。その上で面白おかしく記事を書くのが薫子さんだ
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