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渦巻く滄海 紅き空 【上】
十二 落ちこぼれ
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バと同班であるはずのヒナタからの控え目な応援。それらは全てナル一人に向けられる。
俺への声援は無しかよ、とキバはがっくり肩を落とした。


「……始めてください」
試合開始の合図が下されると同時に膝を立てたキバが印を結ぶ。
(ほんとはコイツとはあんま闘いたくねえ…綺麗に一発でのしてやる)
いの・シカマル・チョウジと同じくナルの幼馴染であるキバは、一刻も早く試合を終わらせようと身構えた。

「擬獣忍法―――【四脚の術】!!」

途端、彼の身体からチャクラが立ち上る。闘技場床に四肢を這わすその様は獰猛な野獣のようだ。
体勢を低く構える。
瞬間、弾丸のように突っ込むキバ。電光石火の早業で彼はナルの懐に入った。そのまま思い切り肘で彼女の腹を突く。

一瞬で背後の壁まで吹っ飛ぶナル。壁に激突し彼女は倒れ伏した。



ピクリとも動かない対戦相手を視界の端で捉え、キバはハヤテに声を掛ける。
「もう当分目を開ける事はねえぜ?試験官さんよぉ…」
幼馴染であり悪友でありそして想い人でもあるナルをあまり傷つけず済んだと内心安堵するキバ。だがその安堵感を隠し、彼は口元に弧を描いた。
試合を観戦している者のほとんどが、チョウジに続いてあっさり終わったなと思う。しかしながら、ヒナタ・シカマル・いのが不安げな表情でナルを見つめるのに対し、サクラとカカシ、そしてナルトは鷹揚とした態度で試合を俯瞰していた。





ナルから背を向けて立ち去ろうとするキバ。だが彼は突然右腕を掴まれ転倒し掛ける。
「なに!?」
「何処行くんだってば?試合は…始まったばっかだってばよ!!」
何時の間にかキバの右腕を掴んで自身の肩に乗せているナル。そのままナルに背負い投げをし掛けられたキバは勢いよく床へ叩きつけられそうになる。しかしながら彼は動揺しつつも空中で反転し、床に着地した。

急ぎ体勢を整えたキバの眼前では、既に彼から距離をとったナルが静かに佇んでいる。
(コイツは確かに気絶したはず…)と、先ほどまでナルが倒れていた箇所にキバは視線を投げる。そこには丸太が一つ落ちていた。

「【変わり身】か…!?」
アカデミーの時は変化の術さえまともに出来なかったのに、と驚愕するキバに向かって、ナルはにいっと口角を上げる。

「オレを舐めんなよ…っ!!」

彼女の啖呵を耳にして、ナルトは人知れず微笑んだ。









(ありえねぇ…っ!!コイツ、ほんとにあのナルか!?)

アカデミーで落ちこぼれと散々馬鹿にされてきたナル。【変化の術】や【分身の術】といった基本忍術でさえ上手く出来ない。頭の回転も悪く不器用でいつも皆から馬鹿にされてきた。一緒に悪戯する時も、コイツは俺がいね―とどうしようもねえな、とキバはいつも
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