十一 策士
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ろ。俺は自分の影を伸ばしたり、縮めたり出来んだよ」
そう言い放つと同時に千本の鈴からキンの手まで伝う糸の影を動かしてみせるシカマル。彼の言葉に呼応するかの如く、糸の真下の影がじわりと蠢きだす。じわじわと大きく広がっていく影は確かにキンの影とシカマルの影を繋ぎ合わせていた。シカマルは自身の影を糸状に細くし、思惑通り彼女を【影真似の術】の術中に嵌らせたのである。
「…だが、それでどうやって勝つというんだ?同じ動きをするだけなのに!」
しかしながら、シカマルの動作と同じ動きをしながらもキンは勝気な態度を崩さない。挑発してくる彼女を気にも留めず、シカマルは手裏剣を一枚取り出した。
「馬鹿か!?お前そのまま攻撃したら、お前も傷つくんだぞ!!」
シカマルが次に何をするのかを即座に察したキンは顔を青褪める。ここに来て初めて焦りだした彼女に対し、シカマルは平然とした態度で手裏剣を構えた。
「んなこたぁ解ってるよ……手裏剣の刺し合いだ。どこまでもつかな?」
「馬鹿、よせ!!」
あくまでも鷹揚に構えながら手裏剣を投擲するシカマル。彼同様、手裏剣を投げ打つキン。
両者が互いに投げた手裏剣は確実に相手に向かって飛んでくる。普通ならば避けるところ、動けない今は防御の構えすらとれない。術を掛けたシカマルが動かなければ、キンが出来る事と言えば回転してくる刃物を眺める程度だ。
迫り来る恐怖。手裏剣が突き刺さる自身の姿が明確な映像となってキンの脳裏に浮かび上がる。せめてもと、彼女は身を強張らせた。
だが手裏剣が刺さる寸前、シカマルが動いた。
上体を仰向けにし、手裏剣を避ける。当然彼と同じ動きをするキンもまた身体を逸らした。
手裏剣が刺さらなかったという安堵感を感じると共に、対戦者の度胸の無さをキンは嘲笑う。
「ふん、所詮ハッタリ…………ガッッ!!」
だが直後、彼女は後頭部を背後の壁に強打した。
そのまま気絶したキンがズルズルと壁に寄り掛かるのを、シカマルは身を逸らした状態で確認する。ブリッジの状態から飛び起きた彼は、完全に昏睡したキンを見下ろして言い放った。
「忍びならな…状況や地形を把握して戦いやがれ!お互い同じ動きをしても、俺とお前の後ろの壁との距離はお互い違ったんだよ。手裏剣は後ろの壁に注意がいかないよう、気を逸らすのに利用しただけだ」
キンの敗因を冷静に語るシカマル。彼の言葉が終わった直後、気を失ったキンを確認したハヤテが「勝者――奈良シカマル」と声を上げた。
途端、歓声に包まれる闘技場。
その中央にて再び億劫そうにポケットに手を突っ込むシカマル。同班のいの・チョウジに加え聞こえてきた声に、彼は緩みそうになる口元を慌てて引き締めた。
「シカマル―――!!…
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