第二章 [ 神 鳴 ]
二十九話 慟哭
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て紫が諏訪の代表として話し合いの場で神奈子達に一つの提案を持ちかけた。それが、
「―――と言う訳で諏訪に新しい祭神を立て、その下に洩矢と大和の神を習合させる事で諏訪の民達の信仰の意識を誤認させて間接的に大和を信仰させる、という案をあたしと月詠様は採用した。さて七枷ここまでで何か質問はあるかい?」
神奈子はそう僕に問いかけてきたので率直に思った事を聞いてみた。
「新しい祭神を立てるのは分かるんだけど、習合させるなら諏訪子と同格の神じゃないと意味がないと思うけどどうするの?」
僕の質問に答えたのは月詠だった。
「大和からは神奈子を出す、というか元々この地方の管理は神奈子がする事になっていたからな。それに戦の方も諏訪が倒れた事で大和に自主的に降伏を申し込んでくる国も増えた。前線から外しても問題あるまい。一応このアホも居るしな」
月詠は横目で話など聞かずに飯を食っている須佐之男を指した。戦の方はいいとして僕としては諏訪子の安全が保障された事の方が重要だ。
「なるほどね、なんか大変そうだけど頑張ってね。と言うわけで僕もいただきます、と」
話し合いも終わったと思い僕は目の前の料理に箸を伸ばすが、
「何言ってるんだい七枷?大変なのはあんたも同じだよ」
と言う神奈子の台詞に止められてしまう。何で僕が大変なんだ?
「七枷あんた重要な所を聞いてないだろう?」
箸を止めた僕を神奈子は呆れ気味に、月詠は何が可笑しいのかニヤニヤしながら見ている。
「いいかいよくお聞き、諏訪に新しく立てる祭神って言うのはあんたの事だよ。因みにこれはあんたの娘からの提案だ」
「ちょっと待って、だって僕は神じゃないよ?」
そう僕は神じゃ無い。祭神なんて出来る訳がない。
「何か勘違いしているみたいだけど別に神じゃなくてもいいんだよ。と言うか今回に限れば神じゃ無い方がいいんだ。その点で考慮したらあんたは一番適役だったんだよ。第一に諏訪での知名度がある、第二に諏訪の神でも大和の神でも無い、第三に民に見せ付けるだけの力もある。今回のこの話もあんたが居るからこそ成立したんだ、まさかとは思うけどここで断ったりはしないよね?」
神奈子の視線に真剣みが宿り僕を射抜いた。そういう訳かなら僕の答えなど一つしか無いじゃないか。……もしかしたら紫に読まれていたのかな、僕が諏訪の国を出て行こうとしてた事。
「……断る理由が無いよね、いや断る事なんて出来ないじゃないか」
そう言う僕を面白そうに眺めていた月詠が、
「素直なのはいい事だぞ七枷、さてと話は終わりだ食事にしようか」
僕にそれだけ言うと月詠は食事を始める。その後は他愛の無い話で終始するだけだった。
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