第二章 [ 神 鳴 ]
二十九話 慟哭
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勝敗を決めるのは一瞬の油断である。
拮抗した実力者同士の戦いにおいてその一瞬は致命的な隙となり、勝敗を分ける決定打と化す。
今まさに須佐之男の首筋に必殺の刃が迫ろうとしていた。本人に油断したつもり等微塵も無いであろう。しかし結果的に隙を付かれ追い詰められている。
そしてその瞬間は訪れた。須佐之男の命運を絶つ一撃が無慈悲に振り下ろされる。
パチリッ
将棋の駒が将棋盤を打つ特有の音が静寂に支配されていた部屋に染込むように響き渡る。
「王手」
「待った!」
僕の打った一手に須佐之男の静止がかかった。
「いいけど……これで八回目だよ?諦めて再戦したら?」
「うっせー!こっから反撃に出るんだよ!」
いやー八回も待ったかけてる時点で反撃も何も無いだろうに。僕がそんな事を考えているのを知ってか知らずか須佐之男は将棋盤を睨み難しい顔をしている。そんな須佐之男を眺めながらこの状況になった経緯を思い返した。
神奈子達が部屋を出ていってから暫くすると月詠に対する愚痴をブツブツ呟きながら須佐之男が部屋に戻ってきた。そして暫く僕はその須佐之男の愚痴の聞き手になっていたんだけど唐突に須佐之男が、
「何つーかこう、男同士で喋ってるだけじゃ詰まんねーな。よし!ちょっと待ってろ」
と言って部屋から出て行き、将棋盤を持って帰ってきたのだ。まぁ僕も暇だったし対局を始めたんだけど須佐之男はここぞ、という時に力押しになる為嵌め易く全く負ける気がしない。
そして今に至る。そんな僕の意識を引き戻すかの様に須佐之男の叫びが部屋にこだました。
「よっしゃーー!!これで俺の勝ちだぜ!!」
不必要な位大仰に構えを取りながら将棋盤に駒を打とうとする須佐之男の背後に何時の間にか月詠が立っていた。そして、
「私が働いている時に何を遊んでいる!このボケナスが!!!」
そんな怒声を上げながら目にも留まらぬ速さで蹴りを放つ。その蹴りは背後を振り返ろうとしていた須佐之男の顔面を捉え凄まじい勢いで壁の方へと吹飛ばし、須佐之男は声を上げる暇も無く修繕された壁を破壊し大和の陣の方に鞠みたいに何度も跳ねながら飛んで逝った。そして遠くの方で、
「何だ今の音は!「一体何が「誰か倒れているぞ!「す、須佐之男様!「敵襲か!「出合え!出会え!・・・
なにか同じ様な場面を見た気がするけど……まぁいいか。とりあえず月詠に声をかけておく。
「お帰り、思ったより早かったね。というか須佐之男にもっと優しくしてあげればいいのに」
僕がそう言うと月詠はさも心外みたいな表情を浮かべ反論を展開する。
「何を言っている、私はこんなにも弟を愛しているぞ?今のは…そうあれだ、愛の鞭というやつだ」
月詠は腕を
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